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私は何の為に剣道をやっているのだろう?
どこが、目的地なんだろう?
サボりにサボった私を、みんなは辞めるだろうと思っているはず。
応援にもどこか身が入らず、見る試合は全部靄がかかっているように感じた。
水の中で試合をしているような。
人の輪郭は定まらず、声や音はこもって聞こえた。
水の中のような試合は、咲や愛美を苦しめた。
少ない空気を求めて喘ぐ剣士達に、勝利の女神は微笑まなかった。
「決勝戦見るの?私は凄く疲れたから、帰るけど?」
「お疲れ様。見て帰る」
不機嫌な愛美と帰りたくなかった私は、見る気もないのにそう答えた。
「じゃあ、お先」
手だけヒラヒラ振って、観客席に腰をおろす。
決勝戦を残すだけとなった体育館は、剣道着から制服に着替えている生徒の方が多くなっている。
二階の観客席には、帰り仕度をした生徒達が学校毎に固まっている。
私の隣に、目立つ集団がやって来た。
──白い軍団。市野田高校。
まだ剣道着のままなのは、今から決勝戦に出場するからだ。
男女共に、白い道着と袴はよく目立つ。
特に男子で白袴は珍しい。
「気合い入れろよ!練習通り、落ち着いていけ!」
「先輩、ファイト!」
男子団体メンバーだ。
勝てば初の優勝だから、抑えられない興奮が伝わってくる。
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