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「真央ちゃん、昨日の売上まずまずだ、予算は行ったよ」
「そうですか……」
商品整理をしながら返した。ワイシャツのサイズは細かい、サイズ順に並べながら欠落したサイズをタブレットで発注をしながらの作業だ。
店先からヒールの音が聞こえた。
「「いらっしゃいませ」」
グレーのスーツ、ワイシャツは白地に不規則な間隔のグレーのストライプ。衿元にワインレッドのスカーフがそのワントーンを華やかにしている。パンプスを履き慣れ、背筋が伸びた凛とした佇まいで店内を見て回っている。年は50才前後のキャリアを積んだ女性らしい、そんな雰囲気を漂わせていた。
「あの、すみません」
「はい、いかがいたしました?」
井尻さんが対応した。
「私、ここではないんですが、こちらのショップでよく買い物させていただいてるの。でも、他のお店とサイズ展開がちがうわね?ここなら主人のサイズあるわ」
「ありがとうございます。それはスタッフで相談して決めてまして専門店らしいサイズ展開をと……」
「そうなの、助かるわ。それにディスプレイのネクタイの合わせ方も素敵。よく見ると結び方変えてある?」
「あぁ、これはこちらの者が昨日してまして……衿のデザインに合わせて変えてあるんです」
その女性は私を見て
「そう、あなたなの……良いセンスね。勉強になるわ」
「ありがとうございます!」
私は嬉しくなり凄い勢いで頭を下げた。なのに井尻さんは
「こいつ面倒くさいとか思わないたちみたいで、昨日も忙しいのにちょこちょこと……でも、そう言っていただけると励みになります。ありがとうございます」
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