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休日のショッピングモールは賑やかだ。
コンコースの緩いカーブの向こうから、次から次へと人が現れる。家族連れ、カップル、ちょっとはしゃいだ若者達。
私は自分が働く店内から通路に出てその光景を見た後、店の中を見渡した。
壁面に飾られたワイシャツ、季節に合わせた淡いトーンで統一され、衿元をシャツに合わせたネクタイでコーディネートした。
「インパクトないなぁ」
その言葉が聞こえたのか男性の先輩、井尻さんが通路に出て来た。
「どした?真央ちゃん」
「なんか、締まりがないって言うか……これじゃお客様が目を止めてくれませんよね?」
「ん~、でもワイシャツだからねぇ……言わば脇役みたいなもんだから」
私は先輩の顔を見ず、ちょっとムッとした声で壁面のワイシャツ達を見て言った。
「私はこのワイシャツを主役にしたくてこの会社に入ったんです」
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