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「ことちゃん、どうした急に会いたいって」
深夜、私は伊里を呼び出した。
私が住んでるマンションの前、この時間は誰も通らないからふたりきり。
伊里はいつもの呼び方で、普段通り接してきた。
「……何かあった?」
だけど私の顔を見るなり、視線を合わせて前かがみになった。
この優しさが苦しい、騙してるみたいでいたたまれない。
「もう伊里とは会わない」
苦しいなら、ここで線を引かないと。
曖昧な関係は伊里にも迷惑だ。
「……なんで?」
伊里は私の顔に伸ばしていた手を戻して、それだけ口に出した。
怒ってるわけでも、ショックを受けてるわけでもなく、単純な疑問だった。
だけど目が合わせられない。動揺してるのを悟られる気がして。
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