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「ことりって可愛い名前、ことちゃんって呼ぶ」
「分かった、いいよ」
「緊張してる?ハグしよ」
そっと腕を広げて抱きしめられた。
男の人とハグするのは初めての経験で、身長差や女と違う体つきにドキドキする。
これが先輩だったらどんなに幸せなことか。
「ことちゃん、嫌だったら言って」
ハグされたまま突っ立っていたら、イサトが眉毛を八の字にして顔を覗き込んできた。
そうだ、現実逃避してる場合じゃない。
男の人に慣れなきゃいけないんだから。
私はぎこちなく背中に手を回した。
「嫌じゃないから、大丈夫」
「じゃあ俺の好きにしていい?」
「……うん」
なんか変な感じ、急に雰囲気が変わった。
耳元で囁かれてゾクゾクする。
「んッ……」
甘噛みするみたいに耳にキスをしてきて、思わず唇の隙間から声が出た。
知らない感覚に鳥肌が立つ。
けどそれは嫌悪感じゃなくて、本能的なもの。
まるで捕食者に狙われた獲物のような感覚。
「唇は?」
「……いいよ」
あ、いいよって言っちゃった。
異性とキスなんて生まれてこの方したことないのに。
嫌だと言えなかったのは、流されやすい自分の性格と、イサトの作り出す雰囲気のせいだと思う。
たぶん、いろんな女の人と関係持ってるんだろうな。
そうじゃないとこんなに上手く誘導されない。
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