#1 royalblue

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「ことりって可愛い名前、ことちゃんって呼ぶ」 「分かった、いいよ」 「緊張してる?ハグしよ」 そっと腕を広げて抱きしめられた。 男の人とハグするのは初めての経験で、身長差や女と違う体つきにドキドキする。 これが先輩だったらどんなに幸せなことか。 「ことちゃん、嫌だったら言って」 ハグされたまま突っ立っていたら、イサトが眉毛を八の字にして顔を覗き込んできた。 そうだ、現実逃避してる場合じゃない。 男の人に慣れなきゃいけないんだから。 私はぎこちなく背中に手を回した。 「嫌じゃないから、大丈夫」 「じゃあ俺の好きにしていい?」 「……うん」 なんか変な感じ、急に雰囲気が変わった。 耳元で囁かれてゾクゾクする。 「んッ……」 甘噛みするみたいに耳にキスをしてきて、思わず唇の隙間から声が出た。 知らない感覚に鳥肌が立つ。 けどそれは嫌悪感じゃなくて、本能的なもの。 まるで捕食者に狙われた獲物のような感覚。 「唇は?」 「……いいよ」 あ、いいよって言っちゃった。 異性とキスなんて生まれてこの方したことないのに。 嫌だと言えなかったのは、流されやすい自分の性格と、イサトの作り出す雰囲気のせいだと思う。 たぶん、いろんな女の人と関係持ってるんだろうな。 そうじゃないとこんなに上手く誘導されない。
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