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彼のことだけわかりません
カランコロン、と鐘が鳴った。
重厚な木製の扉をそーっと開けて、若い女性が顔を覗かせた。
「いらっしゃいませ、中へどうぞ」
「あの、店員さんですか…?」
私はカウンターの内側で立ち上がってご挨拶した。
童顔で低い身長と、いつも袖が手を覆うくらいのだぼっとしたフーディを着ているからあまりちゃんとして見えないのかも。
「はい、ご予約の小林様でいらっしゃいますね」
「ええ。ここって、レンタルもあるんですよね?」
「はい、質屋とレンタルの両方を営んでおります」
そう、ここは質屋兼ブランド品レンタルショップだ。
私はここで主に接客を担当している。
「本日はネックレスのレンタルと伺っております」
「はい…友人のパーティにお呼ばれしていて、ドレスに合うジュエリーをお借りしたいんです」
「かしこまりました。どういったドレスをお召しになるご予定ですか?」
そう言って、私はタブレットを手にした。両手にグローブをつけたままだけれど、これはスマホ対応のものなので問題ない。
小林様からドレスの色柄やパーティの雰囲気を伺いながらすいすいと画面をいじり、お見せする。
「こちらのゴールドのネックレスはいかがでしょう」
「素敵…!パーティなんて滅多にないし、きちんとしたジュエリーをなかなか買う機会はないからレンタルにしたんです」
そういうニーズって結構多いんです。
その後も3つほど候補を見繕い、店の奥から実物を持ってきた。鏡に合わせて選んでいただき、無事お貸しした。
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