第五章 山桜の頃 五

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「俺、弁当を買ってきたけれど、桜葉がいるのならば、焼き肉にしようかな」 「麻野さん、警察に協力してください。それと、俺達は夕食を食べてから来ています」  麻野よりも、勝巳のほうが警察に対応していた。そして、あちこちの指紋を取ると、写真を撮り、警察が帰って行った。 「まあ、盗まれただけで、怪我とかなくて良かった」  勝巳が帰ってゆくと、麻野がどっぷり疲れていた。 「完成品だったのに…………」 「でも、俺も麻野さんが無事で良かったです。倉庫の部屋は狭いですよね?事務所のほうに移動しましょう」  しかし、白蓮はまだ捜査をしていたようだ。あちこちの傷を確認し、傷の割に部屋が荒れていない事に首を傾げていた。 「柱と床に、新しい傷が複数あります。引き摺った跡もある。それなのに、部屋が荒らされていない」 「片付けてくれたのだろ」  部屋を片付けたというフレーズで、白蓮が何かに気が付いた。 「そうか、元通りにしていったのか…………」  元通りにしても、ミゼットが無くなっていたのでは、誰かが来たと気付くだろう。 「きっと…………他に無くなったものがあるのですよ」 「何だろう…………」  倉庫を回ってきたが、無くなっている部品は無さそうだ。最近は来ていなかったので、購入記録と照らし合わせてみたが、それでも無くなっている物が無かった。 「ミゼットか…………」 「既に売薬済だったのに…………」  どこかに、古いミゼットが眠っていないだろうか。田舎を巡って探してみよう。 「まあ、事務所に移動しよう」  倉庫に鍵をかけ、事務所に移動すると、俺達は風呂に入り直した。
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