第五章 山桜の頃 五

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「俺、桜葉と同居したいのです。家賃が大変なので、ルームシェアしたいのですが、そもそも、桜葉は家賃を支払っていなかった。それに、あの部屋、狭すぎです」  白蓮は意味不明の説明をしていたが、麻野は理解したようだ。 「ここに住んだらいいだろう。ここ、職場から、そんなに離れていないし。むしろ、近いだろう」 「そうしてください、桜葉」  だが、俺が家から離れた理由は、将利が来るからだ。しかし、麻野の寂しそうな顔を見たら、それでもいいかと思ってしまった。 「…………それもいいか」 「よし!引っ越しだ。桜葉」  それから麻野は、俺を見つけて、育てるに至った経緯を白蓮に教え始めた。 「桜葉は、麻実の料理を残さず食べた。それも、毎回。そして、覚えたのか、同じ物を作ろうとした」 「はい、ストップ」  俺は、車のオイルまで味見してしまい、麻実が驚いて吐かせた。色は似ているが、オイルはソースではないのだと、そこから教え始めたのだ。 「オイルの味見をした子供は初めて見た。それで、俺の子だと思った」 「麻野さん、余計な事は言わないでください」  ちなみに、オイルは不味かった。 「他にも、桜葉は桜餅にショックを受けて、知恵熱を出した。どこがショックだったのか聞くと、桜が食べ物だったと知った事と言った」  それはショックだろう。菓子に葉っぱがくっついているのだ。 「それとな…………」 「もう寝てください!」  麻野が酔ってしまったので、寝室に担いでゆき寝かせると、俺達も眠る事にした。 「蒲団を持って来るか…………」 「手伝います」  そして、部屋に蒲団を敷くと、どちらがベッドを使用するかで、じゃんけんをした。俺が勝ったのだが、わざと白蓮が負けた感じがして、俺は床で眠る事にした。
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