第五章 山桜の頃 五

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「助けに行きたい」 「仲間に、相談してみます。ですが、基本的に、俺は桜葉を護りますが、将利君はどうでもいいのです」  どうでもいいというのは、少し間違っていて、将利を救助するという命令が出ていないらしい。でも、どうも白蓮が属する組織は、誘拐を扱っているので、仲間に連絡して協力を求めていた。 「桜葉は、普通の生活をしていてください」 「他に出来る事が無いからな」  とりあえず、今出来る事はない。そこで、俺はキッチンに行くと、朝食を作っておいた。 「白蓮、朝飯!」 「今、行きます!」  すると、麻野が先に来て、食事を見ていた。 「麻野さんは、こっち。焼き魚とご飯、味噌汁」  麻野は和食が好きだ。 「どこに材料があったの?」 「俺の車に積んでいたものです」  材料は、俺の車に積んでいた非常食だった。でも今の非常食は、かなり美味しい。 「白蓮は、朝っぱらからヌードル、それとサラダ」 「サラダは、そこの雑草ですね」  雑草ではなく、生き延びていた野菜だ。  朝食を食べ始めると、麻野がご機嫌になっていた。まだ将利が誘拐されたと、気付いていないのだ。 「俺は午後には乃芙さんの所に帰るよ。それで、白蓮が先に越して来るから、よろしくお願いします」 「よろしくお願いします」  麻野が心配なので、先に白蓮に来て貰おう。 「わかったよ。準備しておく」  白蓮が引っ越ししたら、麻野にもこっちの部屋に移って貰おう。 「将利、家に帰っていないそうだよ。どこで、遊んでいるかな…………」
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