第六章 老木と恋桜

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第六章 老木と恋桜

 アパートに帰ると、一緒に白蓮も来ていた。 「白蓮、帰らないの?」 「そうしたいのですが……まだ、準備が出来ていなくて、交代要員が来ていないのですよ」  狭い部屋に二人でいると、どうも更に狭く感じる。更に部屋の真ん中に卓袱台を置き、白蓮が仕事を始めてしまった。 「何の交代要員?」 「桜葉の護衛ですよ。隠れて行いますので、生活に支障はありませんよ」  それならば、白蓮も隠れて支障なく存在して欲しい。 「俺は大学もありますので、昼は身動きが取れません。夜は合流できると思います」 「来なくても大丈夫だよ」  すると、白蓮がメールに添付されていたという動画を見せてくれた。 『…………あふん、あああん!!』  画面を見るよりも先に、音が飛び出してきて、俺は画面を避けて周囲を確認してしまった。 「ここ、壁が薄いからAVを見るなら、音を消すか。ヘッドフォンだよ」 「見るなとは言わないのですね」  ヘッドフォンを探していると、白蓮が音を消した。そこで俺がパソコンの画面を見ると、巨大な毛玉が動いていた。 「画面が小さくて、何をしているのか分からないけど…………これ、何の生き物?」 「多分、人間でしょう」  俺が画面を拡大していると、白蓮が俺の手を握っていた。これは、悪い意味ではなく、俺が動揺して部屋を飛び出さないように、捕まえているようだ。  俺も声を聞いた瞬間に、何が起こってしまったのか予測している。  毛玉に見えていたのは、轟 哲太という、闇ブローカーで、将利を持ち帰りした幹部らしい。  そして、その後に、将利は轟により開通したようだ。画面の中では、ゴリラにしか見えない轟と、将利ががっちりと結合し絡み合っていた。
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