第六章 老木と恋桜

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「窓にはカーテンか……でも、このカーテン、部屋のものではない。車のカーテンだろう。それに、揺れが混じっている。つまりは、車は走って移動している」  上手く撮影しているが、合成の部分もある。それに、音も喘ぎ声だけに編集されていた。場所を特定されないように、轟は計算している。 「これだけゴリラならば、どこかに出没すれば、見つけられる」 「裏稼業の方ですから。あまり、見つけられる場所にはいないですよ」  この映像は、いわば脅しだろう。何かメッセージが付いているのかと、本文を探してみたが、何も無かった。 「桜葉、両親の元に戻り、保護を受けた方がいいのかもしれません」  そうすれば、将利が帰って来るというのだろうか。俺が安全になっただけでは、意味が無いのだ。 「乗っている車は、黒のワゴン。走っているのは高速道路、ブレーキを掛けていない。車種を言うので、探して欲しい」 「どこで、色と車種が分かりました?」  将利は、正常位で激しいピストン運動を受け止め、その後に奥を回されて、足を痙攣させて失神しそうになっていた。大きく口を開けて善がる姿は、正気の欠片も感じさせず、いつもの将利とは大きく異なる。いつもバカそうな顔をしていたが、今の比ではない。  それに轟の、ガタイのいい将利を簡単に持ち上げ振り回す腕力は、人間のものとは思えない。 「高さは、将利の足の伸びで計った。合成していても、人間はそのままだから」  室内の高さが分かれば、かなり車が限定できる。途中、激しさのあまりに、将利の足が天井にぶつかり、それで高さが確信できた。 「車種と色は将利が呟いていた。多分、言ってはいないと思う。唇を動かしただけだ。撮影されていると気付いていたのだろう」 「唇を読んでいたのですか……他には何か言っていましたか?」  それは、高級ワゴンは乗り心地が良い、加速が凄い、揺れが無い、それに、座席が本物の革で出来ていて、車体と同じ色に合わせてあると言った。 「北に向かっていると言った。捕れたばかりのマグロを食べようと言われたとか…………」
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