第六章 老木と恋桜

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「将利君を助けたい気持ちは分かりますが、一人では絶対に行動しないでください。それと、これが見せたかった、城の復元CGです」 「ありがとう」  CGは、早速、今から見よう。 「駅まで送ろうか?」 「迎えが来ているので大丈夫ですよ」  白蓮も知られたくない事があるのだろう。俺は、手を振って見送っておいた。  部屋に戻ってCGを見てみると、細部まで作り込まれていた。 「凄いな…………」  もしかして、完璧に再現するために、建築や文化、建築基礎まで学んだのかもしれない。 「しかし、雑草が雑」  雑草は季節が出鱈目だったが、部屋から見える桜は見事なものだった。そして、桜を見た瞬間に、目の前に光景が広がっていった。  そこは山の上で、空が大きかった。しかし、桜の季節になると、空は白く染まる。 「山桜か…………」  ピンクの桜もいいが、山桜もいい。新緑の眩しさと白い花が、眩しく空を覆う。  そこに一緒に居るのは八田で、髭を生やした美丈夫であった。笑顔が優しく、手が大きい。そして、器も大きな人だった。 「顔まで思い出したのは初めてだ」  俺は八田が大好きで、強くなって守ると約束していた。 「ここが八田様の部屋」  しかし、年が離れれていて、中々恋愛にはならなかった。 「大人になるまで待っていて欲しかった…………」  優しい八田は、子供には手を出さない。だから、俺は早く大人になろうとした。
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