第六章 老木と恋桜

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「ここまで、細部を知っているという事は、白蓮、八田様の生まれかわりなのか?」  もしも八田が生まれ変わり、今度は同じ年になったとしたら、恋愛できるのだろうか。 「俺が無理か…………」  八田への思いは、憧れから始まって、親のように慕い、そして守りたいと願った事だ。今の所、白蓮に対して、そんな感情は無い。 「そもそも、生まれ変わりで恋愛しない」  今を生きているのだ。  しかし、CGは見事で、桜を見ると涙が溢れて止まらない。この桜を見上げていた時は、本当に少ない、平和で優しい時間だった。この時間が、永遠に続けばいいと思い、その為には勝たなくてはいけないと誓った。 「遠い昔の恋話か…………」  結果、八田とは悲恋で、助けられずに終わったのだ。そして、続きの人生が調べられているが、昔の俺は賢い女性と添い遂げ、三男五女を儲けたという。 「子供多いな…………」  こんな前世があったのに、将利の恋愛に文句を付けていたので、こんな事になってしまったのだ。将利は幼馴染で、俺の容姿を気にしなかった少ない人間だ。将利を助けないという選択は、俺には無い。 「轟 哲太か……」  轟は闇ブローカーで、武器商人でもあった。主に海を介して品物をやりとりしていて、取り扱う品物は多様だ。轟は、その姿にコンプレックスがある。轟が幼い頃、学校に保健所の職員が来た。それは誰かが、教室に猿が入り込んだと通報したかららしい。 「酷い事をする奴もいるものだ……」  自分も猿人と言っていたが、通報はしていない。 「だから、将利を持ち帰った……」  将利も猿人に近い。顔は割と二枚目なのだが、体がゴツく、体毛が濃い。だから、女性に嫌われていた。毛髪用シャンプーで全身を洗うなどと、笑われていたくらいだ。 「将利も轟を嫌がっていない。気持ちを理解できるからか…………」
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