2.

1/1
前へ
/161ページ
次へ

2.

「ユス!」  彼女に駆け寄ったのは、鮮やかな金髪を持った二人の男女だった。その面差しはよく似ている。 「お兄さま、お姉さま」  ユスティティアは顔を綻ばせた。 「今日出発だなんて、父上は言っていなかったぞ」 「ああユス、何もできなかった私を許して」  悲壮な顔を浮かべる二人に、ユスティティアは穏やかな顔で言った。 「お二人とも、異色のわたくしを可愛がってくださり、本当にありがとうございました。わたくしこそ、王家に生まれながら、王族の務めを果たせなかったこと、どうかお許しください」 「ユス、そんなこと言わないで!」  姉と呼ばれた娘が叫んだ。 「ユス、困ったら俺に連絡を。きっと力になるよ」  兄と呼ばれた青年が、悔しそうに拳を握った。 「お兄さま。王太子としてのお務めはきっと大変なことだと存じます。どうかお体に気を付けて」 「お姉さま。もうすぐ隣国の皇太子の元へお輿入れですね。お姉さまの隣国での生活が幸せなものとなりますよう、お祈り申し上げます」  ユスティティアは二人と抱き合ったのち、二人に微笑んで、そっと離れた。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

308人が本棚に入れています
本棚に追加