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 バルコニーからユスティティアが出発する様子を見ていた王太子が、王に言った。 「父上、ユスは極夜の町というところに行くと仰っていましたね。それはどんな所なのですか?」 「お前も王になるなら知っておきなさい。極夜の町はどの国にも属さない。名前の通り、夜だけが続く町だ」 「極夜っていうからには、白夜もあるでしょう。ユスの体に障りそうだ」 「そうではない。あそこは、極夜だけが続くのだ」  極夜の町まで、一月ほどの旅程だった。 「わたくしのせいで、長い旅路に付き合わせてごめんなさい。二人とも、こんなことしかできないけれど、これで美味しいものでも食べてください」  差し出された金貨に、侍女と御者は顔を見合わせた。 その金は、追放される王女への、せめてもの餞としてユスティティアに与えられたものであった。体の弱い彼女が働けるとは思われず、今後生きていくために必要となるだろう。 「そんな、いただけません」  二人が金貨を返そうとすると、ユスティティアは首を横に振って、儚げに笑った。 「いいの、受け取って。わたくしにはこんなにたくさんのお金、必要ないから」
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