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高校時代、僕は内気な少年だった。 色素が薄く、日に焼けるとすぐに皮膚がヒリヒリする体質のため外で元気に遊ぶこともできないことが大きな要因だったと思う。 そのため部活にも入らず帰宅部の僕は、ずっと勉強ばかりしていた。そんな時だった。 天使………藤原撫子さんと出会ったのは。 「ねぇ君。落とし物したよ。」 当時は僕も彼女も高校2年生。その土地の有名難関高の制服に身を包んだ僕と、割と名の知れた女子高の制服に身を包む彼女。 高校2年なのにチビで、高校の女子からも相手にされない僕は、7月の暑い日差しの中、突然の女の子の声掛けにびっくりしてしまって思わず変な声を出してしまった。 「あははっ、そんなに驚かないでよ。はい、定期券。」 そうして彼女はやわらかな白魚のような手で僕の手を取り、落とした定期券を差し出した。 「てか君、その制服すごく優秀な高校のだよね。………あのさ、君がよければ私にお勉強を教えてくれないかなぁ……。」 突然何を言い出すかと思えば、どうやら彼女は数学が苦手らしく、せっかくの高校2年生の夏休みが次の補習で赤点をとると潰れる可能性があり、藁にもすがる思いで僕に頼ってきたようだった。 「あ、あの僕でよければ!」 たった2週間だけの交流。勉強しかしてこなかった高校時代で唯一の甘い思い出。 その間、彼女は僕に沢山のことを話してくれた。 …………名前すら彼女に教えなかった僕に。
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