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どこだろうここ。どことなくスモーキーウッドの香りがする。 あ、頭痛い。昨日は確か、美都子と失恋で飲んでいて、その後たまたま参加してきた八束と二人で飲んで……あれ?そっからどうやって帰ったっけ。 二日酔いの気だるさを感じながら、瞼を開ける。私の部屋のカーテンではない遮光カーテンからうっすらと陽が入り込んでるのが確認でき、ああ、もう朝かと気付いた。 「おはよ、ナデコ。」 ナデコと呼ぶ男は一人しかいない。広いベッドをキョロキョロと見渡すが、ベッドの上には私しかいない。じゃあ……とリビングに目を向けると、ソファの背もたれからひょっこりと顔を出した八束がいた。 じゃあここは八束の家。 どうやらワンナイトプレイボーイの八束さんだが、そんなレディコミのような展開にはならなかったらしい。 そりゃそうか。酔っ払って記憶飛ばした女なんて抱きたくないか。なんて思ってたのは束の間 「あのさ、仕事どうする?」 「……有給消化コースで。」 時間を見ると朝の9時半。八束の家がどこにあるのかは知らないが、これは確実に遅刻コース。てか八束さん、カーテンくらい開けてくださいよとこの家の家主に文句を言いそうになる。 ……お世話してもらったのに八つ当たりとは私の性格はなかなかに悪い。 「てか八束こそ仕事は?」 「俺は今日テレワークだから。」 たしかに八束はソファに座ってるわけで、その小さなテーブルの上にはパソコンが開かれてるわけで、こういうちゃっかりしてる所、同期だけど総合職と一般職の格の違い見せつけられてて悔しい。 「八束、暗い中でパソコンなんて開いてると目が悪くなるわよ。」 悔し紛れに出た言葉は、よく子供向けアニメが放映されるときに最初に出てくるような注意だった。 「あー、ごめんごめん。」 思ってもないような軽い謝罪が返ってくる。まぁ、今は目が覚めたばかりだし頭痛いし明るくなくて助かってると思ってるのも事実。 「目、悪くしないようにね。」 「はいはいありがとうお母様。」 「誰がお母さんよ!」 そして八束はくるっと背を向け、早く職場に休むように連絡しなと促した。 無駄な情報だが今日は金曜日。思いがけない三連休を作ったが、そのうち1日は二日酔いの頭痛と戦いそうだ。
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