かくれんぼ

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かくれんぼ

「も~い~かい?」 「まーだだよ!」 「も~い~かい?」 「もーいいよ!」  勇渚(いさな)は小さくしゃがみ、背中を丸める。この四月に小学一年生になった彼女は、自宅近くの公園で友達とかくれんぼをして遊んでいた。  低学年は三時下校なので、真夏の太陽はまだ高いところにあった。前髪をびっしょりと濡らした勇渚は、おでこに張り付いていてもお構いなしだ。ブルーのワンピースに、赤いリボンの付いた麦わら帽子が良く似合っていた。  鉄棒のある場所は、少し背の高い草が広がっている。その中にデンと居座る楠木の裏に隠れる勇渚。 「あきちゃん、み~つけた!」 「よっちゃん、み~つけた!」  次々と友達を見つける声が聞こえる。場所を移動したほうが良いかもしれない、と考えた勇渚(いさな)は、見つからないようにと、ぎゅっと瞑っていた瞼を開けた。  すると、草むらの中でキラリと光る何かが視界に入る。「何だろう」と呟き、草を掻き分け手を伸ばした。そこにあったのは、一つの小さな瓶だった。  勇渚はその瓶を手に取り、まじまじと眺める。透明なガラスの内側には玉の形をした石のようなものが入っていた。玉の表面には、横一列に複数のハートの模様が描かれている。瓶をクルリと一周させ、ハートを数えた。 「いち、にい、さん……きゅう、じゅう。十個ある」  勇渚は頬を綻ばせ、右と左、交互に首を回し誰もいないことを確認すると、また瓶に視線を戻した。蓋を開ける。小さな掌に、コロリと玉を乗せた。感触は石だった。  摘まんで顔の前に持ってくると、瞳を輝かせニコリと笑う。すると、宝物を見つけた気分になり「可愛いぃ!」と、大きな声を出してしまった。 「イサナちゃん、み~つけた!」 「あっ、見つかっちゃった」
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