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電磁波攻撃
「ごめんなさ〜い?」
「そんな謝り方がありますか」
「子供のやったことでしょ?!」
最寄り駅近く踏切前。雨の日のデイケア帰り。ここではママ友集団だったが、子連れ加害者が結束して逆ギレ。集団ストーカー被害者の、日常の一幕。
「え〜、そんな人いるんだ〜」
40代でふくふくと太った精神科医に笑われ、20歳も下の甘夏は診察室で小さくなる。言うんじゃなかったと後悔した。診察室を出る。
甘夏はその年の秋から、自宅での電磁波攻撃に苦しむようになる。就労移行支援施設からデイケア通いに生活ランクは下がるし、経済的な自立はどんどん遠ざかった。
ある夕方、国内放送のPHKが自宅玄関前まで訪問に来た。うら若い男性職員は「あっ、でも……」と言いよどみ、背中を小さく丸め、片手を口元に当て「お宅は生保ですから」と声をひそめた。
周囲に知られないよう、彼が気を遣ってくれたのは嬉しい。でも……
(生保って、恥ずかしい事なんだ……)
甘夏は少なからずショックだった。でも、PHKの彼が声を潜めてくれなかったら、それはそれで困るのだ。
甘夏は電磁波攻撃に苦しみながらイラストを描き続けていた。ゴッホのように、或いはゴッホすら無かったように、一枚も売れないで寿命をむかえる予感がしていた。
集団ストーカー被害はブログで告発している。被害者が孤立しない方法はsnsしかない。甘夏は誰にも相談できず、血の滲む思いでブログを開始していた。
彼女は芸術が得意だ。スマホpcのテクニック的なところを使えば、snsで人気者になれない事もなかった。
しかし、ここでも症状が邪魔し、好きなことはアナログ以外、何も出来なかった。
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