ダミーカメラ

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ダミーカメラ

 同時期、甘夏は自宅でネットスーパーと、その配達員からも攻撃を受けていた。しかし、アパートの立地から言って、車を所有していない者は、ネットスーパーを頼るしかない状況だった。  商品への悪戯も、配達員のハラスメントも、数限りなくあった。  アパートの火災警報器点検の日は、一週間後に迫っていた。必ず男性工作員が担当するはず。甘夏は、もうハラスメントを受けたくなかった。  彼女は男性工作員があまりにも恐かったので、ネットスーパーコメゾンで防犯カメラを買って、嫌がらせを封じる事は出来ないかと考えた。  最初は良いアイデアだと思えた。しかし、防犯カメラは高い事が判明し、落胆する。しかし、こう考えなおした。  じゃあ、安いダミーカメラは?  ダミーカメラだって犯行抑止になるじゃないか。  彼女はさっそくダミーカメラを購入した。  戦いの日の朝を迎えた。警報器点検の日。 あいにくの曇り空で湿度と体感温度が高い。こんな時の翌日は雨か、雪かもしれない。  案の定、病的な特殊メイクを施した、猫背洋梨体型の50代工作員が、点検員として現れた。  何日も顔を洗っていないかのような不潔っぷり。甘夏に向かって、若い女性の嫌がる笑みを浮かべていた。  しかし、彼は一瞬にしてダミーカメラに気づく事になる。彼は飛び上がるほど驚愕して、稲妻のように点検を済ませると、真っ青になって逃げて行ってしまった。彼が自分の顔面をダミーカメラに向ける事は一度も無かった。    事態に凍りついたのは甘夏も同じ。ますます悪い展開になっているのがわかるのだ。  ダミーカメラは、ハラスメント防御になればいいと思っただけだ。しかし、何をやっても自分から相手に攻撃したことになってしまう。
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