第22話 「夜の会社」

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第22話 「夜の会社」

季節は冬になった。 c8f49b31-ea55-4898-a048-14b51ce17680 厚手のコートを着て、マフラーを巻き、手袋を装着する。 ―よし。 これで今日の寒さ対策もばっちりだ。 靴を履いて、バッグを拾い上げる。 沙利 「じゃあ行ってくるね。」 クラリ 「はーい!車に気をつけてね!」 “りょーかい”と返事してドアノブに手をかけたところで 思い出した。 沙利 「あ、今日はかなり遅くなると思う。」 クラリ 「え、何時?」 沙利 「うーん、多分夜中…。どうしても間に合わせないといけない仕事が、急に入ったもんだから。」 思い出してうんざりする。 クラリ 「そうなんだ…大変だね。じゃあ、帰り危ないから迎えに行く。」 沙利 「ダメよ。その頃には狐化してるかも。」 クラリ 「あ…、そうか。…ごめん、迎えにも行けなくて。」 俯くオレを見て沙利ちゃんは笑った。 沙利 「なに言ってるのよ。一人でもさっさと帰ってくるから。心配いらないわ。」 クラリ 「…でも。あ、タクシーは?それか…最終手段で涼に送ってもらうって手もあるけど、」 沙利 「なんで涼くんが最終手段なのよ。それに、今日は休みよ。」 クラリ 「そうなんだ。」 沙利 「じゃあ今日は夕飯食べたら、先に寝てて。冷蔵庫に作って置いてあるから。」 クラリ 「わかった。がんばってね。」 沙利 「うん。いってきます。戸締よろしく。」 クラリ 「いってらっしゃい!」 バタンとドアが閉まる。 沙利ちゃんが行ったのを確認してカギをかけた。 ――… …情けない。 沙利ちゃんを迎えにも行けないなんて。 涼だったら、普通にできるのに。 あー、オレも大人になってたら…。
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