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――…終わった。
朝まで、ここにいなきゃいけないの?
壁に背をつけたままズルズルと座り込んだ。
どうしてこんなことになったのかわからない。
“帰れない”という現実が、ひたすら頭の中を駆け回った。
以前、みんなで残業した大雨の日を思い出す。
計
(…どうする。会社に泊まるか?)
有美
(イヤよ!こんなバカでかい会社でなんて。なんか出る!)
計
(おいおい…。変なこと言うなよな…。)
―――…
あの時は泊まらずに終わったけど、今度は確定だ。
しかも、私一人だけで。
立てた膝に顔をうずめる。
せめて…携帯があれば、警備会社に電話できるのに。
電話…
ここには電話なんて山ほど置いてあるけど、全部ロックが掛かったドアの向こうだ。
…。
それでも、もしかしたら。
どこかにロックがかかってない部屋があるかもしれない。
ダメ元で探してみようか…。
でも、そうなると…また上の階に行かなきゃいけない。
この今にも幽霊に襲われそうな暗闇を探索するのは、相当きつい。
ホラーが好きでも、自分が体験するとなれば話は別だ。
…。
クラリはどうしてるかな…。もう寝てるよね。
沙利
「…、」
急に心細くなって目頭が熱くなった。
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