第23話 「届かない」

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――…終わった。 朝まで、ここにいなきゃいけないの? 壁に背をつけたままズルズルと座り込んだ。 どうしてこんなことになったのかわからない。 “帰れない”という現実が、ひたすら頭の中を駆け回った。 以前、みんなで残業した大雨の日を思い出す。 計 (…どうする。会社に泊まるか?) 有美 (イヤよ!こんなバカでかい会社でなんて。なんか出る!) 計 (おいおい…。変なこと言うなよな…。) ―――… あの時は泊まらずに終わったけど、今度は確定だ。 しかも、私一人だけで。 立てた膝に顔をうずめる。 せめて…携帯があれば、警備会社に電話できるのに。 電話… ここには電話なんて山ほど置いてあるけど、全部ロックが掛かったドアの向こうだ。 …。 それでも、もしかしたら。 どこかにロックがかかってない部屋があるかもしれない。 ダメ元で探してみようか…。 でも、そうなると…また上の階に行かなきゃいけない。 この今にも幽霊に襲われそうな暗闇を探索するのは、相当きつい。 ホラーが好きでも、自分が体験するとなれば話は別だ。 …。 a68c2a61-185d-47d5-bd59-a21f5e11cae1 クラリはどうしてるかな…。もう寝てるよね。 沙利 「…、」 急に心細くなって目頭が熱くなった。
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