最終章  乙葉ちゃんと彼氏君

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最終章  乙葉ちゃんと彼氏君

「で、緊急避妊薬飲まないって、どーゆーこと?!!」 緊急避妊薬を鷲掴みにして駆けつけたピンク色の髪は、オールバックの状態だった。 尾崎さん、お仕事終わったばかりだったんだな。 なんて思っている目の前で、野木くんは尾崎さんの前で美しいほどの土下座していた。 「申し訳ない!それと報告したいことがある!!」 「あんた達が結婚するとか言ったらアタシ首吊るからね?!!」 「なんで分かったの?」 サッと顔をあげ、嬉しそうに花を飛ばす野木くんを見事なまでに口をへの字に曲げて、「でたよ」と呆れた声が心の底から出ていた。 「ぜっっっったいダメ!!!!!」 「そこをなんとか」 お納めくださいと帯のついた現金を机にトンと置いている野木くんを見てギョッとした。 「賄賂でなんとかなると思うなよーー?!!」 なんて言いながら懐中に閉まっていく尾崎さんの姿を見て、思わず笑ってしまう。 「で?結婚したいって、またなんで? 特にナギたん、アンタ結婚はする気ないって子供の頃からずっと言ってたじゃない。 ナギたんの幼少期になんて言ってたか覚えてる?!婚約しました♡って言ってる若衆に“結婚してもお前ら別れるよ”って一丁前に大口叩いてたくらい、結婚とか興味無さそうだったでしょーよ! 生い立ちもあって、身に沁みてたんじゃないの??」 凄い、野木くんの幼少期めっちゃスレてる、、、。 どんなだったのか見てみたいと密かに思いながら、2人の話し合いにしっかりと耳を傾けた。 尾崎さんにとりあえず椅子に座らせてと言われ、窓辺にあるソファに腰を落とした。 向かい合うように、野木くんと私もソファに腰掛け、背筋を正す。 「そうだね。でも、18歳の時に乙葉と別れる少し前から、彼女との将来のことを何度も夢見ていたんだ。 もしかしたらって、どこか希望みたいのがあった。怖くて、彼女の前から消えたけど、離れていても、時が経っても彼女しかいないって思えたんだ。 なにより、俺のカッコ悪いところを見せられる唯一の、大切な子だよ。彼女以外考えられない」 はぁぁぁっと深く長いため息を漏らし、尾崎さんは展開について行こうと必死のようで、眉間に寄せたシワを伸ばしては、目をぎゅっと瞑って、また口をへの字に曲げた。 「っても、ナギたんが苦労してきたのを近くで見てきたアタシからすると、それを好きな女と子供にも背負わせるってことよ?」 「大丈夫!そこはなんとかフォローするよ。 俺の経験を活かしていけばいい。 大変だとは思うけど、苦難を彼女と共に乗り越えて行けるよう、今まで以上に頑張るよ」 「ナギたんはもう荒波に呑まれても這い上がってこれるかもしれないけど!一般の子を嫁にするってこと自体大変なんだからね? ドンパチ起きてみなさいよ!こんな夫のそばにいたら命いくらあってもたんねーわ!!ってなるんだから!そこのクソガキちゃんあんだーすたーんっ?!」 ピシッと指をさされ、思わず肩が強張る。 「た、多分!!」 「YESと言えよ」 あー不安!不安しかないーーっと頭を抱えている尾崎だったが、大きくため息を溢したのち、部屋を出て行って、再び部屋に入って来ると、机の上にドンっ!!!!と熨斗が貼られた日本酒が2本机上に乗せられた。 「これは結婚のお祝いって意味じゃないわよ! ナギたんの『射精おめでとう!!』の祝い酒なんだからね!!」 なんか、複雑な気持ち。
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