嫉妬と彼氏君

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「噂に関してはごめん。けど、処女とかそんなのどうでも良いし、気にさせてごめん」 気まずそうに息を吐くと、意を決した顔をする。 「思ったこと言うから、引かれたら嫌だと思って、本当は話したいこといっぱいあるんだよ。 ただ、ドラマに出てた俳優の一誠がタイプって言ってたから、真似してたところもあって」 んん??と皆が野木くんの饒舌になっていく様にみんながついていけてない。 「ま、まって?私、一誠くんがタイプとか野木くんに言ったことあったっけ?!」 「あ、あぁ。うーん、あったよーな?」 まぁ、それはおいといて!と話を流される。 全然腑に落ちないんだけど。 なんだか、どこかで野木くんと会ったことあるみたいな話し方なんだけど、記憶にないのだ。 こんな素行不良で、切れ長の目に黒髪。 だめだ、全くわかんない。 「つまり、転校してくる前にどこかで乙葉ッチと会ったことがあって、好きが爆発して偶然高校の制服を着た乙葉をみかけて 親に土下座してまでここに入ってきて、乙葉ッチのタイプが俳優の寡黙な一誠くんみたいになりきっていた。と?」 「なんか少しちがうけど、だいたいそう、デス」 何故か5人の前で正座させられている野木くんに、オロオロと狼狽えている私が挙動不審だ。 カッコ悪ーと小春ちゃんと恵美ちゃんに言われていたが、雪子と由花は追いかけてくる当たりかっこよくない?!と女子トークを炸裂させた。 「で、噂の真相は?」 ドドンッ‼︎と雪子ちゃんが斬り込んだが、予鈴が鳴り、教室の外にいたクラスメイトたちが教室に戻ってくる。 「チッ。タイミング!」 「まぁまぁ!ここまで斬り込んだことだし、あとは2人で話して仲を深めるなりした方が良いと思うよ!」 恵美ちゃんに促され、私は野木くんに手を差し伸べ、「立てる?痺れてない?」と話を変えようとヘラリと笑ってみせた。 野木くんは私の手を掴むと、 彼の腕の中へと引っ張られてよろけた。 厚い胸板に押し込まれるように、彼の汗の滲む匂いにドキドキした。なんだか、懐かしいようなシトラスの香り? 「好きなのは本当だから。信じてもらえるように本気出すから、覚悟してて」 あぁ、神様。 私の真面目でごく普通の日常生活は、どうなってしまうのか教えてください。
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