嫉妬と彼氏君

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「そう言われるかもしれないと思って抑えてたんだけどな」 不服そうに口元を歪める彼が、子供のように拗ねて見えて、こわばっていた筋肉が和らぐ。 視線を逸らしていた彼の視線がまた熱を持って見据えてくる。 黒髪の隙間から覗く彼の本性と向き合っているような、そんな錯覚がする。 「幻滅して欲しくないと思って、かっこつけてたかも」 「あははっ、野木くんてかっこつけしい人だったんだ」 ん?だけど待って。 この一年、彼の横顔や背中ばかりで気づかなかったけど、野木くんて、よく見たらめっちゃイケメンなので、は??? 長い前髪のせいで表情よくわかんなかったけど、あれ。 私って面食いなのかな? 彼の瞳から目が離せなかったのは、この特徴ある灰色がかった青い瞳のせいなんだと思っていたけれど、顔が整っていたからなのかもしれないっ。 イケメンだと思ったら余計に緊張する。 何これ、陰キャのスペックなのかな。 「うん、そうかも。好きな子のことしか考えてないアホだよ俺」 サラッと恥ずかしいことばかり言ってくるのも素なんだなぁ。 「あの、私の中ですごく疑問なんだけど、どうして私のことを好、好いてくれてるのかな?」 やっと聞けた!!! 心の中で、やっと言いたかった言葉を現実に言えたことにガッツポーズした。 机上に開いたままの日誌が風でパラパラとめくれていく中で、彼は陽だまりよりも熱い眼差しを送ってくる。 「好きに理由なんてあるかな」 「あ、あると思うけどな?!」 思わず食い気味に言葉かぶせた気がするけど、まさかの返答で思わず。 「だって転校初日に付き合ってくれって。それも目が合った瞬間に!」 「探してた女の子追いかけて学校転入したからね。そりゃ告白するしかないと思うんだよね」 「?!!!」 季節外れの転校は、私のせいだったってこと? 衝撃的過ぎて、私は頭の中が爆発でもしたのか、何にも、本当になんにも言葉が浮かばなかった。 白学ラン着ていたあれはアレはお受験(金持ち)だよ?小中高一貫校エレベーター式なんだよね? そこを辞めてこの高校に?!偏差値ちょっとだけ高いくらいの高校なのに? ちょっと私の理解が追い付かない。 将来が約束されている白桜御高等学校なのに?!私の中で両親がやむを得ない状況で仕方なくこの学校へ、、、だと思っていたから、余計に驚きを隠せなかった。 素行不良気味なのはそれに対する八つ当たりだと思ってたけど、今の話を聞く限りちがうような。 「あの、ちょっと整理させて」 「俺の愛が重かった?」 「ちょっとね」 まだ本気なのかもわかんないけど、何の目的があってここまで追ってきたのかも分からない。 さっきまで掴みかけていた野木くんがまた遠のいたような気さえしてしまう。
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