嫉妬と彼氏君

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それから「これから少しずつお互いを知っていこう!」という話だったのだが、いきなりライフスタイルが変わることもなく。 野木くんと会話の少ない帰り道は相変わらずだった。 というより、お互いにどう話していいか分からない。というような雰囲気だったと思う。 新しいクラスにも慣れ始めた夏の訪れを感じる梅雨に入った。 隣の席は清楚ギャルの1人、小田原 雪子(おだわら ゆきこ)とお弁当を一緒にすることが当たり前になっていたお昼休み。 「ぶっちゃけ、乙葉ッチはクラスメイトでヤれそうな男子っている?」 口に含んだ緑茶が盛大に噴射され霧となる。 やだ、乙葉ッチ汚いと言いつつポーチからティッシュを取り出して拭いてくれる女子力高めギャルだ。 「な、何言ってるの?」 「だって、最近は乙葉ッチどんどん可愛くなってるし、実際男子たちの間では夜のオカズ候補とか言われてるみたいだし」 「待って、どーゆー話の流れ?汗」 「ほら、1年の時、野木さんから告白されたとかって噂になってたし!乙葉ッチはビッチ説まだ残ってるからさ〜」 もう、黒歴史なんだけど。 お願いだからそれは忘れてくださいとお願いすると、雪子ちゃんはそんなの分かってるよーと爆笑してみせた。 「ほら、あの噂めっちゃやばい野木さん?に告白されたとか噂なってたじゃん。あれ、実際どーなの?告白はされてたのは本当??」 あまりにも気になる話題だったのか、近くに座っていた3人組の清楚ギャルたちが集まってくる。 「何何?めっちゃ気になる話聞こえたんだけど」 「そういえば如月さん野木さんと恋人?って噂だもんね」 あまりにもグイグイくる質問に耐えかね、現在進行形であることを話した途端、ギャル達はドッと爆笑したのと同時に驚きの声が上がった。 「恋人なの?!」 「てことはもう1年経つ頃だよね?アッチの方は野木くん激しめ?いや、乙葉ッチのことだから実はねっとり責めていく感じ?」 「え〜、てっきり処女仲間だと信じてたのに〜」 「なかなかやるなぁ、乙葉さん」 なんでこの子たちA飛ばしてZに行ってる設定なんだろう、、。 下の話もしたことないし、まず手も繋いだこともなければ本人のことあんましらないんだけどなぁ。 キスしてもいいか?は転校二日目に言われたことがあるけど、言われただけである。 うーん。もう恋愛上級者たちの話題に切り替えていきたい。というより、自分の話が気恥ずかしい。 「まだ手も繋いだことないんだよね」 「「「「え?」」」」 4人揃った声で賑やかだった教室は一瞬寝り返る。 ストレートヘアが湿気で癖がついてるよーと1人は話を遮るように空気を切ると、教室はまた元の話へと戻っていく。 ありがとう、小春ちゃん。 髪から伝わる熱がじんわりとあつくて、ワイシャツがじっとりしてくる季節になった。 ヘアアイロンのやり方を教えてもらったのもこの小春ちゃんだ。 なんでも家が美容院を経営しているらしい。 一年間何もなく、手も繋がず清く正しい関係だとみんなに伝えたが、ドン引きしているのが窺える。 「ないわー。2ヶ月記念日ー♡とか、誕生日に♡とかあるもんじゃないの?えっちはないし、キスくらいはあるもんじゃない?清すぎて君たちは聖人か何かなの?なんなの?w」 「その、彼を知るタイミングを逃してしまっていたというか」 謎に責められてる気分になり、肩が萎縮する。 私だって謎めいた一年間だったって思っているんだよっっっ。 髪の熱を流すようにハンディタイプの扇風機でクールダウンしている小春ちゃんの横で、メイクポーチをいじり出した雪子ちゃんは渋い顔をする。 「てか、あいつ白桜御学院の出なのになんであんなとんでもない噂ばっかあんだろねw」 「乙葉ちゃん噂のことも聞いてないの?」 全く聞いてない旨を伝えると、更にドン引きしてる彼女たちがため息をこぼしていた。 「まぁ、聞きづらい内容ばっかりだもんね。 この前隣の高校の生徒タコ殴りにしたのって野木くん?って乙葉ッチ聞けるタイプじゃないもんなーww」 「乙葉ちゃんじゃなくても聞けないでしょ」 「同感w」 「あ、でも3年の先輩がラブホから野木くん出て来たの見たって言ってたよ。しかも美女をたくさん侍らせてたって!」 えええ?!と声を荒げる3人を静かにー!となだめると、小春ちゃんに髪の毛綺麗にセット出来たよと手鏡を手渡される。 わぁ、美容院でセットしたみたいにめっちゃ可愛い。前髪も柔らかくカールされ、サイドも綺麗な外ハネでピュアに見える。 これ本当に私? 小春ちゃんと入れ替わるように雪子ちゃんが目の前に座る。どっさりと重そうな化粧ポーチから出てきた化粧水をコットンに浸してパッティングを始められ戸惑う。 「でもまだ付き合ってることになってるんだよね?ラブホから美女連れて出てくるとか、とんだヤリチンだわ。そんな男と付き合ってるとかいいの?」 「あ、乙葉ちゃんは観賞用であの美女たちは実戦用みたいな?」 ないわー。と更にドン引く女子たちの会話に、違和感しか感じられなかった。 この前の野木くん、まるで私のことを本気で好いてくれてるような感じだったから、他の人の噂を聞いてるみたいなんだよなぁ。 あー、そっか。 本人と噂がマッチしてないから、噂自体あまり気にしてなかったのかもしれない。 が、実際に見た人が近くにいると聞くと段々と現実味が出て来てしまうのは確かだ。 「てか、アンタ何してんの?」 雪子ちゃんの隣で興味津々に作業をみている由花(ゆいか)ちゃんがニマニマと口角を上げる。 「んー、野木さんが乙葉ッチ好きならさ、更に可愛くなった彼女見てキスくらいしないかなーって思って」 あー!見た目から攻めていく感じねー?とさも当然のようにメイクしている。 「ま、待って!私別に野木くんとキスしたいとか思ってるわけじゃ!」 慌てて立ちあがろうとするのを小春ちゃんと友恵(ともえ)ちゃんが肩を抑えて阻止する。 まぁまぁと楽しんでいる4人に圧され座る。 「だって、別れたいとかそういう考えには至ってないんでしょ?」 雪子ちゃんの指摘に、思わずハッとする。 あ、考えたことがなかった。 なんで付き合っているんだろう?に気を取られていて、気づかなかった。 目を閉じてねーと言われるがまま、されるがままの乙葉の周りで、更に制服も弄られている。気がする、、、。
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