嫉妬と彼氏君

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目を閉じている時に浮かんだ彼の優しい眼差しを浮かべて、なんとも言えない気持ちになる。 好きという気持ちなのか、イマイチわからないでいる。 「乙葉ッチはまだ野木さんのことわからないから好きかどうかもわかんないんでしょ?噂を間に受けないところも野木さんは嬉しいのかもしれないし、敢えて触れない優しさってものなのかも?みたいな」 「わぁ、大人と付き合ったことある雪子ちゃんのアドバイス痺れるわぁ」 由花ちゃんが茶化すように笑いを誘う。 雪子さまと呼んで!と調子に乗る2人に思わず口元が緩む。 「男の子苦手だったのもあったし、野木くんにどんな話題振っていいのかとか、本当に好きなのかとか、聞いても良いかわからなかったんだけど。そんなの言葉にしなきゃわからないもんね。うん、今度野木くんに伝えてみようと思う!」 「じゃあ今伝えたら?」 へ? バターーーンッ‼︎とスライドドアを激しく叩きつけるように開け放したその先に、息を切らした野木くんが立っていた。 教室で過ごしていたほかのクラスメイト達はギョッとして凍りついているのが背後から伝わってくる。 その周囲にいる雪子ちゃんたちもあまりの切羽詰まる野木の気迫に圧倒されていた。 「ハッ、、、はあっ、、、乙葉」 刺さるような鋭い瞳を向けられ、ゾッとする。 え?え?!何か怒られるよーなことした?! 胸の下まであるサラサラにしてもらったナチュラルブラウンの髪が肩を滑るように流れる。 「の、野木さん、どう、したの?」 こ、怖いせいで脚が震えそう。 ズカズカと巨人が華奢な女子生徒の前にドカッと崩れるように座り込んだ。 「ビビったぁ〜、、、。乙葉が教室で大変だって聞いて、、、怪我してない?みして」 状況が掴めない中、由花ちゃんがスマホ片手に人差し指を立てて、舌をぺろっと出しておどけてみせる。 「さっき先輩たちにメッセ送ったんだよねー。野木君みかけたら、乙葉ちゃんが教室で大変なことになってるよって言ってほしいって」 なにしてんの、このギャル。 殺されるくらいの殺気だった野木くん初めて見たんだけど?! 膝を床について、椅子に座ってる私を溶かすんじゃないかってくらいに観察してきた。 顔をそっと撫でてくる彼の温もりに一瞬怯えたが、遠慮がちに撫でる手は少し震えてるように思えた。 安堵した眼差しで見つめられると、なんだか『彼女』って気持ちになった気がした。 「何ともないな」 「ごめんね、なんか勘違いさせちゃったみたいで」 殺気だった雰囲気が柔らかくなったのを感じた教室も緊張感から解放された。 「てか、なにその顔」 「え?」 「顔真っ赤だし、なんかメイクしてるし、どーゆー状況?」 お互いに謎の展開でどうしたらわからない。 というより、野木くんが立膝立てて私の両手を握ってる状況がひじょーーーに、非常に恥ずかしいんですけどっ!!! それを囲むように見てる4人のギャルはニマニマ。 「野木くん、乙葉ッチまだ野木くんのことわかんないって悩んでるみたいだったから、あーしらが助言したんだよねぇ」 「はあ?」 見せ物じゃねーぞとムッとしてる野木くんは不機嫌そうで、迷惑かけて申し訳ないと思って声に出そうときた時には、彼がまっすぐな瞳で私を捉えて離さない。 「乙葉がそう思ってんの知ってるし、俺見た目こんなだから怖いだろうし、少しでも慣れてくれればと思ってる。 言葉にしてなくてごめん。 この状況がどんなのかよくわかんねーけど、チャラいとか思われたくないっていうか。 怖がらせたいわけじゃない。 俺を知ってほしい。 その、噂とかもあって怖いだろうから距離を取ってて、でもそばで、乙葉自身で俺のこと感じて欲しかったんだ」 なんか空気読めてんのかわかんねぇけど、今感じたこと伝えたけど、これで合ってる?と雪子ちゃんたちにボソッと呟いていた。 「状況把握処理が半端ねぇ」 「出来る男すぎてやばい、私が惚れそう」 「こらw」 「何これ、アオハル?アオハルなの?!」 ちょっとギャル4人黙ってて。 手が少し震えてたのは、本気で心配してくれていたんだと、今のでしっかり伝わった。 そこまで大げさに心配することなのかな?と私は思ったけれど、ここまで想ってくれる彼の気持ちに少しでも応えていかなきゃいけない。 握られた大きな手を握り返して、「ありがとう」と溢れる。 「野木くんごめんね、私、イマイチまだ好きだとかよくわかんないの」 「うん。何となく解ってた」 「それに、私まだ処女だけど、女の子取っ替え引っ替えの野木くん本当に私で良いのかな?って」 「やだなー、僕そんなヤリチンじゃないんだけど」 「見た目が素行不良なので」 「え、なんで僕の告白OKしたの?」 「真面目に告白されたので」 「え?それで素直にウンって頷いちゃったの?」 「こ、告白されたの初めてで。あ、あと、びっくりしてつい頷いてしまったのもあの時、あったので」 「うわ〜、付き合って一年経ってるのに傷つくやーつ。 一年、僕純粋に愛してきたと思ってたんだけどなぁ〜」 「野木くんの噂聞いて、余計なんで付き合ってるんだろ?いつ手を出されてしまうんだろって毎日怯えっ、、、考えてました」 「待って待って待って??彼女のセリフじゃないwww」 ギャル4人に爆笑され、野木くんは目が死んでいたように見える。
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