彼氏君の本気がエグすぎる

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彼氏君の本気がエグすぎる

野木くんの「本気出すから覚悟してて」という謎の言葉は、しっかり反映されていた。 朝はBluetoothイヤホンで英単元を聴きながらの登校なのだが、正門前が普段より騒がしくてイヤホンを外した時だ。 にわかにざわつく生徒たちの間をすり抜けて行こうと窮屈に感じるブレザーで肩を縮めて横に体を滑らせた。 嗅いだことのあるシトラスの香りが鼻先を掠める。 赤茶の牛革のスクールバッグを両手に抱えて通過しようと目の前を通り過ぎた所に、自転車通り抜け防止用のポールに腰掛けた青年がいた。 白のサマーベストにオリーブグリーンのパーカーを卒なく着こなし、高身長だけど線が太すぎないホワイトブロンドの青年がそこにいた。 なんかの撮影かな?めっちゃ天使みたいな人。 この世にあんな綺麗な男の人っているんだなぁ。 なんかどっかの韓国アイドルみたい。 ふと彼のズボンがうちの学校の制服だって気が付いた。 灰緑のグレンチェックは通ってる高校のズボンやスカートに採用されているやつだ。 ここの生徒なんだ。あんな人いたなんて知らなかった。 私には関係のない人だとその場を後にしようとしたのだが、背後から誰かに呼び止められる。 「おはよ、乙葉ちゃん」 聞き覚えのある低い声に振り返ると、さっきのハイトーンマッシュヘアの青年が立っている。 灰色がかった青い瞳が優しげに微笑んでいるのを見て、驚愕すぎて両手で抱えていた鞄を自分の足の上にドサッと鈍い音を立てて落としたが、痛みよりも衝撃的すきて声も出ない。 「の、野木くん?!」 黄色い声がヒソヒソと騒がれている中で、私の発言によって登校生徒たちの顔色が変わったのが空気にすら伝わってきた。 「本気出すって決めたし、ずっとハイトーンカラーやってみたかったんだよね。こういうのあんま好みじゃなかった?」 私の知ってる野木くん像がクラッシュし過ぎてもう初めましてだと思う。 性格もまた普段と違ってチャラさが増してる気が、、、いや、むしろこれが彼の本質なのだろうか? 何からどうツッコミ入れたら良いのか考えが纏まらずにバグっているとギャル4人組が乙葉に声を掛けてきた。 「おーはーよーん乙葉ッチ〜!つか、早速ナンパされてんのーぉおおお?!!!誰っ?!野木?!」 「野木くん?!」 「ギャップありすぎて誰だよwwww」 小春ちゃんはびっくりして声が出ないのかと思いきや「え?!これめっちゃ高いローチンの薬剤じゃない?!やばー、やっぱ色味凄い〜綺麗すぎる〜」と1人だけちがう意味で驚いていた。 小春んち美容師一家だもんなと由花に話を振っていたが、誰も耳に入らない。 「似合ってるよ!」 何か言わなきゃと思った第一声がそれだったのだが、気の利いた台詞でないにもかかわらず、彼は嬉しそうにフニャッと笑う。 「やば、めっちゃ嬉しいもんだね」 「モデルさんかアイドルかと思っちゃったよ。あ、でもまたココ傷が出来てる。絆創膏いる?」 左こめかみ辺りに真新しい生傷が出来ているのを見て、鞄から絆創膏を取り出した。
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