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なんでいつも怪我してるの?と聞きたい気持ちもあるが、まだそこまで踏み込んで良いのかも分からず言えないでいる。
「わがまま言っていい?」
ニッと悪戯っぽい顔して顔を覗き込んでくる。
何?と視線を下に向けて野木くんから離れるように少し距離を取る。
彼は前髪を少しかき上げて左こめかみを指差す。
「ん。乙葉ちゃんに手当てされたい」
何その可愛いおねだりっ!!
照れくさいのと慣れないことへの恥ずかしさで、ピンクとグリーンのストライプ模様の絆創膏を思わずべチッと勢いよく張り付けてしまった。
「わっ、ごめんね!思いの外強く貼り付けちゃった」
「ヘーキヘーキ!それより」
柔らかな前髪をサッと手櫛で直すと、再び彼の顔が目の前に迫ってくる。
「な、なに?なんか顔に付いてる?」
なんで野木くんこんな顔つか付けてくるのかな?
最近、ずっとこんな調子で顔が熱くてたまんないよ。
熱中症になりそう。
顔の前で両手をこの字にガードする手振りすると、耳より少し高めに結ったポニーテールをちょんと指で弾いた。
「今日は髪の毛結ってるんだね。今日も可愛いよ」
「ありがとう。小春ちゃんに朝からテレ電してもらって教えてもらいながらやったんだ。頑張った甲斐があるかも」
気恥ずかしさに笑っていると、雪子ちゃんが予鈴なるから行くよーと背中を押され歩き出す。
雪子の腕が乙葉の腕を組むように並び、首を傾げて言う。
「あれ、なんか野木の顔見たことある気がすんだよねー」
眉間に皺を寄せて怒ったような顔になる雪子に恵美が「ぶっさぁw」と爆笑していた。
「いや、毎日見てるじゃん?」
「そうじゃなくてさー、もっと違うとこでみた気がすんだよねー。あのイケスかない感じっていうの?なんか作った顔みたいなー、うーんっ」
「人の彼氏にいけすかないとかダメだろ」
中学生の時にでも見かけたとかじゃん?なんて由花に言われ、雪子は思い出したように声を上げた。
乙葉の隣を歩いている野木を指差し、苦い顔をする雪子を見た野木は雪子の腕を掴んで颯爽と2人は階段を駆け上がって行く。
「え?!何事?!」
由花が後を追って階段を走って行くと、小春と恵美は顔を見合わせて首を傾げた。
「な、なんか置いて行かれちゃったけど、どうしたんだろね、雪子と野木さん」
置いて行かれたことにびっくりしたわけではないが、野木くんが他の女子の腕を引いてどこかへ消えたことに若干の胸の痛みを感じている。
そのことに戸惑っていた。
なんで野木くんと雪子ちゃんが2人でどこかへ行っただけなのに胸がざわつくのだろう。
2人は知り合いだったのかな?
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