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「せんせー、野木さんあからさまに染めてるのになぜ生徒指導されないんですか?」
眩いくらいのハイトーンカラーは、流石の委員長でも口を出さずにはいられなかったようだ。
下校前の連絡事項を話し終えた先生から、ほかに疑問や気になることはあるか?の問いに挙手したのがクラス委員の笹滝(ささたき)。
えー、野木さんのハイトーンカラーめっちゃ綺麗だよねー。
学校のアイドルみたいでよくない?
野木くんに限り良しでもいいと思う!
なんて女子たちの小さな声がそこかしこに聞こえる。
小田原雪子以外にあのヤクザの息子と気付いている者はいないのが、雪子にとってとても悔しい気持ちなのと、知らないでいる皆を羨ましくも思った。
この学校のセンコー、みんな買収されてるよ。みんな。
なんて心の声を大にして言いたい。
特に乙葉ッチ!!!!
教壇に手をついていた先生の手がにわかに震えているのが雪子にだけ伝わっている。
「何を言ってるだ、みんな。野木は生まれつきホワイトブロンドだっただろ?」
無茶苦茶すぎねぇか?!!!
一瞬ざわつくクラスメイト達だったが、数ある噂や野木の見た目も相まって誰も何も言えなかった。
白桜御学園から来ていることも後押ししていることもあるのか。どこまでも計算高い奴め。
窓側席で突っ伏している姿を誰もが天使の寝顔を見ているようだと微笑ましくクラスメイト達は眺めている。
あーしは騙されないけどなっ?!!
あー、平凡なはずの高校生活が、悪魔のせいで胃が既に爆発しそう。
軋むような痛みに胃が襲われ、手のひら全体で腹をさする。
下校チャイムが鳴り響いて帰宅しようと椅子から立ち上がれば、野木渚と視線がズバッと合ってしまい、黒い笑顔が返ってきた。
あの笑顔から凄い伝わってくる。
『喋ったらどーなるかわかってんだよな?』の顔だ。
乙葉ッチ、ごめんなーーー!!!泣
まだ人生謳歌したい年頃なんだ。
親に迷惑かけられないし!!!
「小春!恵美!由花!今日はカラオケ行こー!早く行こー!!!」
3人の手を無理矢理引いて教室を後にする。
「また明日ね、乙葉ッチー!」
捨て台詞の中に心の声を託したけれど、あの子鈍いから伝わるハズがないよね。
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