妄想彼氏と乙葉ちゃん『完結』

彼氏君の健気さと色欲と

「かわいすぎる」

「うん？」

夏も本格的になってきた7月半ば。
夏休みが明日から始まろうとしていた。

夏休み入る前の大掃除。
今日はワックスがけをすることになっていた乙葉だったが、教室の前に掃除が終わった他クラスの生徒らが数名待っていた。

「何あれ、誰待ち？ここのクラスで自主練とかやる感じ？」

前髪をゴムで縛ってチョン髪にしてる恵美が気だるそうにはたき棒を手にし、盛大にクシャミをした。

「夏休み入るからってことで、他クラスの連中が乙葉とID交換の為に待ってるらしーよー？あと、野木のファンクラブ？」

「乙葉ちゃん見違えるくらいに可愛くなったよね。肌とかめっちゃ透き通ってて羨ましい」

由花は塵掃除を終え、用具入れに片しながらそう言うと小春は相変わらずの調子で、髪の毛乱れたら直してあげるとのことで、美容助手のようにみんなの髪の毛を整えまくっている。

おかげでこのクラスの身嗜みが1番整っていて、みんな美容に関心が高いクラスになっていると噂の的になっている。
まぁ、このクラスに化け物級な美少年がいるのが皆の向上心を高めているに違いないだろうけど。

おかげで、クラスの男子たちは韓流に目覚め、最近はメイクも覚えたらしかった。
女子よりも肌が綺麗になる男子に負けてたまるかよ。な女子たちが美容の研究に勤しんでいる。

朝刊で美しすぎる高校生として特集が組まれる謎の事態にまで発展していた。

その新聞に乙葉が大きく取り上げられた。
先日、プール開きに伴ってプール掃除した時に撮った写真を恵美と小春がSNSで挙げたのがバズったのだ。

クラスメイトたちとのアオハル写真なのだが、制服が濡れて肌に張り付いて艶かしさがある中で、青々とした芝生に腰掛けた先にプールが映り込んだ濡れた髪と哀愁漂う透明感ある女子高生として反響を呼んだらしかった。

エロさがあるはずなのに、透明感ある彼女の表情がなんとも言えない！エモい！！とハッシュタグがつけられている。

「一気にアイドルみたいになってしまったね」

乙葉がID交換を迫られているのを横目に、羨ましさと嫉みがややこしく心を出入りする。

「当の本人は困ってるみたいだけどね」

「あ、野木くんが他クラスの男子蹴っ飛ばしてるw」

「乙葉ッチが見てないスキを狙っての犯行とは、ゲスいわ」

ワックスをかけてる乙葉の背後で、睨みを利かせた野木の牽制により退散して行ったが、野木のファンとなった女子たちはなかなかにしぶといようで笑顔が張り付いたまま応答せずだった。