彼氏君の健気さと色欲と

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「悔しそうな顔してるね」 「そりゃあ寝てたはずの野木くんに点数で負けちゃったんだもん。悔しく思うよ。次のテストでは負けないからね」 遠慮がちに唇を尖らせて言うと、彼は更に瞳を輝かせ喘ぐような声でため息を零す。 「なにそれめっちゃ可愛い〜。なんでそんな可愛いこと言えるの?はぁ〜っ、これが萌えって感情なんだね」 胸を抑えて、胸の動悸止まんないどうしよとオーバーなリアクションをみせてくる。 な、なんかホントに当初の寡黙だった野木くんとのギャップが、温度差が激しすぎてもう別人にしか思えないよ。 「野木くんって人格者だよね。一緒にいつもいるはずなのに知らない野木くんたくさんいてびっくりしちゃう」 「そうかな?」 「別人だよ!」 全力で伝えた。 野木くんは少し頬を赤くして、視線を斜め横にやる。 「デートできてることに舞い上がっちゃってるかも。びっくりさせてごめんな」 中性的な顔立ちの彼が照れるとどこか女の子みたいに見える瞬間がある。 女の私からみても可愛いなぁと思ってしまうくらいだ。 だからなのか、彼の口調がぶっきらぼうな言葉になると「男の子」なんだと再認識させられて、変に左胸奥がドクドクと心拍をあげさせられる。 野木くんと握っている私の手から、この心臓の高鳴りがバレてしまうんじゃないかと思うくらいに。 野木くんの冗談や白桜御学院にいた時の話を聞きながら繁華街を歩いてたどり着いた先に、ウサギキャラクターをモチーフにしたカフェにたどり着いた。 野木くんもここに入ってみたかったんだけど、どうー?なんて可愛くオネダリされるように言われ、首が取れるんじゃないかってくらい首を縦にふった。 「乙葉こういうの好きなのかなーって、この前通りかかった時に思ったんだよねー」 「え!なんでわかったの?ラブリーうさメロめっちゃ好きなの!今日からオープンだってお昼に小春ちゃんから聞いて、凄く行きたいと思ってたんだよ!めっちゃ嬉しい〜!!」 ピンクとラベンダーカラーの店内にはファンシーな雲やユニコーン、たくさんのウサギのイラストとぬいぐるみが飾られていた。 「いらっしゃいませメロ〜♡ふぁんふぁんワンダフル♡うさメロファンタジーカフェへようこそ〜!!」 某遊園地のスタッフ並のテンションで出迎えてくれたパステルカラーのメイド服の店員が3人出迎える。 「当店はうさぎの世界に迷い込んだという設定ですので、来店された方にはピンクのうさ耳か紫のうさ耳のどちらかを付けてのご入店となります〜♡」 わぁ、雪子ちゃんたちと一緒だったのなら恥ずかしいとか思わないんだけど、野木くんと一緒だと凄く恥ずかしい気持ちになる。 野木くんこういうの大丈夫かな? 背後に立っているだろう野木くんの様子を窺い見ると、既に紫色のうさ耳を付けた野木くがいた。 「可愛いー?」 高身長でもうさ耳が似合う彼のエンジェルフェイスが眩し、いやもう尊い。 「私も紫色のうさ耳にしよ」 野木くんがノリノリでカチューシャを付けてくれたおかげで羞恥心は半減した。 「お揃いだね〜」なんてニコニコする彼は躊躇なく、1度離していた手を握ってきた。 驚いたのがバレたのか分からないけれど、彼が視線を合わせるように猫背気味になって言う。 「今日はずっと離してあげないよ」 灰色と青色が混ざったビー玉のような瞳が獲物を取ったかのように笑う。 席へ誘導されている店員さんの後ろで、野木くんは小悪魔な笑顔を魅せ「わがまま聞いて貰う約束でしょ?」と、射抜くような眩しい笑顔を咲かせた。
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