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瞬いて見えた彼の瞳はよりパッと明るくなった。
「よろしく、彼女さん」
不敵な笑みはかっこよくて、だけど少し怖くも感じた。
男の子の顔してる。
よろしくお願いしますと三つ指ついて頭を下げると、硬すぎ〜とクスクス小さく笑った。
私、野木くんの彼女なんだ。
この一年、彼女であったはずなのにしっくりこなくて、大丈夫なのか?いいのかな?なんて役不足だと萎縮していたけれど、今は、彼女でいたいという気持ちが出てきている。
こうして彼がお姫様扱いしてくれるからなのか、それとも彼の熱量が凄くて錯覚してるだけなのか、彼の本心を知りたくて、彼女になりたいのか。今はまだよくわからない。
だけどこれから彼をもっと知っていきたい。
今日みたいに、何度もデートを重ねて、いつか好きになってくれた本当の理由を教えてもらえたら。
そんな淡い目標を心の隅に寄せて、純粋に彼を見ていようと思った。
ドリンクやデザートが天板に配膳され、うさメロがプリントされたパンケーキを見てテンションがあがる。
「野木くん、写真撮っても良い?」
グレージュのスマホを取り出し、写真を撮る気満々でいると、野木くんは「律儀だなぁ」と笑って、手にしていたスマホを彼に取られた。
「パンケーキと一緒に乙葉も撮ってあげる」
ありがとうー!!と感激の感謝を熱烈に伝え、メロメロになりながらパンケーキと一緒に撮って貰った。
人差し指と親指をクロスさせ、右頬の横で作ると、野木くんはキョトンとしている。
「何そのポーズ?」
「えっと、きゅん。ってきたよってポーズ?ハートに見えるでしょ?」
両手でハートを作ると野木くんは左手で胸を押さえて悶えていた。
「俺がきゅんです」
「飲み込みが早い笑」
そろそろケーキ食べなと促され、ハッとする。
うさメロのパンケーキのインパクトが大きくて野木くんがドリンクしか頼んでいないことに今気がつく。
「野木くんお腹空いてない??」
「あー、ごめんね、気を遣わせちゃった?
大丈夫。今、胸がいっぱい過ぎて食べれないだけだから」
くっ、、、と胸板に手を置く野木くん。
なんかもういちいちオーバーリアクションで見ていて飽きない。
パンケーキは甘酸っぱく、後を引かない甘さだ。
見た目よりも重くなく、とても食べやすい。
「野木くん、凄く美味しいから一口どう?」
一口大のパンケーキをフォークに刺し、彼の口元へ差し出した。
パクッと彼の口の中へ消えたパンケーキを見て思い出す。
これ、俗に言う「アーンして」というものでは?!
1人で食べるなんてという気持ちが先走ってしまい、つい弟にあげるような感覚でやってしまったが、野木くんはなんとも思ってなさそうだ。
「あまいけど、これなら食べれそ」と唇に生クリームをつけて笑う。
「野木くん生クリームついてるよ」
スカラップ型にカットされたペーパーナプキンを手に取り、差し出そうとしたが「そう?」と言いながら右手で私のうなじに手を添えてくる。
彼の右手に気を取られた刹那、シトラスと生クリームの甘い香りがして、目の前にホワイトブランドの前髪があった。
長いまつ毛に、キメの整った肌。
唇に熱い感触。
伏せられたまつ毛が瞬いて、青い瞳が艶っぽくこちらを見つめる。
「あーあ、生クリームつけちゃった」
そう言って、再び整った顔が近く。
啄むように、ちゅっと音を立てて唇を舐められた。
「一年我慢した僕へのご褒美だと思って許してくれる?」
ニッと悪戯っぽく笑う彼の笑顔はまるで少年のようだった。
「きっ、、、?!!」
ぶわっと全身の血が一瞬で爆発したかのように沸騰した。
確信犯だ。
初めてのキスだった。
甘酸っぱい生クリームの味と、シトラスの香り。
わ、私には刺激が強過ぎるっ!!!
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