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彼氏君と噂
夏休みが始まって5日目。
ジリジリと肌を焦がす夏が本格化した。
求愛の鳴声を出す蝉は、毎日メッセージをくれる野木くんのようだった。
デートで教えた指ハートの自撮り写真や変顔した写真、時には風景写真など、野木くんの日常をメッセージと共に送られてきた。
野木くんはクラスメイトの男子たちと旅行に行っているらしくて、今日はここに来てるよと仲の良さそうな集合写真だったり、かっこよくキメてるものもあって、とても楽しそうである。
空調がきいている中央図書館で宿題をしている合間の息抜きとして、彼からくるメッセージを眺めていた。
夏休みに入ってから何度も思うが、野木くんと離れると野木くんのことばかり考えている。
デートしたあの日、普段知り得ない野木くんを沢山知れたのが大きいし、何よりも不意をついてのキスは衝撃的であった。
しかも2度もマウスtoマウス。
ぐわぁ、思い出しただけで目眩がする。
彼の熱量は私をも溶かす勢いだ。
あの熱を浴びせられまくられてしまったら、流石に感化する、か。
長方形のホワイトテーブルは8人座れるようになっている。その一番角席で顔を覆うように突っ伏した。
勉強したいのに、身が入らない。
「そういえば、楊蘭高校にヤクザの息子がいるらしーよ」
「あー、あの噂の?やばw大丈夫?だれかヤられてない?」
「友達の弟曰く、超絶イケメンらしいよ。普通の高校生してるらしいw」
「めっちゃやべぇ噂しかないのに高校では大人しいとかマジか!ウケる」
目の前の席に大学生らしき2人の男たちがスマホをいじりながら言う。
うちの高校にヤクザの息子??
そんな子がいたんだ。知らなかったや。
「写真ないの?」
「それがさぁ、写真撮ったらヤバそうな男たちに囲まれて写真消すよう脅されるらしいんだよw
なんでも、その息子がヤクザだって高校にバレたくないらしいよ」
「えー?無理じゃね?流石にヤクザは隠しきれないだろ。てか何で身バレしたくないんだ。お友達できなくなるのが怖い〜ってやつ?」
「さぁ?そこまでは」
「でもイケメンなんだっけ?顔で寄ってくる奴はたくさんいそうだもんな」
「噂だと毎晩何人かの女連れてヤッてるって話だし、女の心配は無さそうだよな〜」
「くっそ羨ましいw
てか何人か一晩でやるとか絶倫かよww」
な、なんだか野木くんの噂並みにすごい子が他にもいるみたいだ。
近くに野木くんがいるから、野木くんの噂ばかりで他の人の噂は知らなかった。
まぁ、噂は噂だしね。
噂も尾ひれついてきちゃうから、きっと本人苦労してるだろうなぁ。
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