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知らない人とキスしてる、の?
頭がぼーっとして何も考えられない。
嫌なのに、、、。
必死に眠らないように瞼だけは開いていた。
「あ、鞄の中見た?」
「生徒手帳入ってたよ。律儀な子だわ。陽蘭の子だ。へぇ、頭良いとこだねぇ。えーっと、オトハちゃんでいいのかな?」
頭上で生徒手帳をかざすように持ち、それをスマホで撮影していた。
「ほーら、かわいいお顔が撮れたよー?これからたくさんお写真撮ってあげるね、オトハチャン」
気が付けばTシャツを捲られ、あられもない下着姿を曝け出されてしまっている。
興奮気味に下着を剥ぎ取られ、弾むたわわの白い胸を揉み上げられ、ぞくりとする。
やだ、やだ、、、!!
怖いっ、!!!
「綺麗なカタチだなぁ、これは値が張れそう!」
「スケベ共に揉みしだかれたらカタチも崩れちゃうだろうなぁ」
「ごめんねぇ、オトハチャン。これからはイケナイ大人たちと定期的に遊んであげるし、お小遣いもあげるから頼むよー?」
言ってる意味もまったく理解出来ずに苦しむ。
声が出ない。どうして??
さっき飲んだ中に何か混ぜられていたのだろうか?
眠りそうになる頭をフル稼働させたが、それしかもう浮かんでこない。
襲ってくる強烈な睡魔に抗うことがこんなにも苦痛だとは知らなかった。
今寝てしまっては、私は野木くんに顔向けが出来ない‼︎
「オトハチャンはお薬大好きかなー?」
「沢山塗っておいてあげるからねぇ」
洋服も剥ぎ取られて、ショーツだけになってしまっている。
何かを下着の上から塗りたくられているようだったが、ただひたすらに気持ちが悪くて、怖くて仕方ない。
この悪夢がいつ終わるというのだろうか。
押し寄せる恐怖心。
見知らぬ男たちの好奇な瞳。
視界がグラッと強く歪む。
徐々に視界がぼやけ、男たちの輪郭さえハッキリしなくなった。
頼りなのは、もう聴覚だけで、完全に瞼は下りてしまっている。
男たちのなされるままでいる音を聞くしかなかった。
そんな中、部屋の外が騒がしくなったようだ。
ドアを叩きつけるような音が何度か聞こえてきたかと思えば、施錠が解除される電子音が部屋に響く。
「あ?なんだ?」
高身長の男の声がそんな言葉を発した直後、鈍い音が響くのと同時に金髪の男の悲鳴が上がった。
「ひぃぃ‼︎な、なんで貴方がここに?!」
ま、待って待ってくれ!!という断末魔のような、恐ろしい鈍音が何度も繰り返し耳朶に届く。
「、、、お前たちだけは絶対に殺す」
「アガッ、、ガハッゴホッ、、ずみぃまぜんっ」
啜り泣く男の声が濁音と共に言葉を発している。
まるで、口の中が液体でいっぱいになってしまったかのような、そんな響きである。
「あ、あぐま、、、悪、魔、、、!!!」
ゴキィッと歪な音や悲鳴にならない声がして、恐怖心が煽られていく。
精一杯に瞼を持ち上げ、目の前で何が起きているのかを確かめようとした。
ボヤける視界の先に背の高い人が扉の近くで、こちらに背を向けている。
誰??
聞いたことがある声。
「あーあ、こりゃひどい。まーた、なぎたん派手にやらかしたねぇ。後始末どーすんのよ」
その隣に黒づくめの男と思わしき人が立っている。
低い声を唸らせるように男は言った。
「餌にしといて。だるまにして、生きたまま」
「わぁ、死刑宣告までしちゃうのー?まぁ、そりゃ、彼女がこんなことになっちゃってたらそうなるわよね」
「待て待て、流石にやり過ぎ。とりあえず、コイツらのイチモツ潰すだけで勘弁してやんな」
背の高い人の隣にまた黒い服を着た背の低い人が現れる。
どうやら3人いるようだ。
「あ、ついでに臓器も売っとくか」
「いやぁ、何この人たち!ちょー怖いんですけど!!加害者に同情したくなったわぁ」
オネェ口調で話してる人がユラユラと視界で揺れているのが何となくだがわかる。
「なぎたん、とにかくあの彼女、様子がおかしいわよ。薬キメられちゃってるんじゃない?」
三人がこちらを向いたのか、徐々にシルエットがはっきりしてくる。
「とりあえずなぎたん落ち着いて。彼女の介抱が先よ」
「解ってるよ」
フワッとバスタオルのようなものを身体にかけられると、白髪の男性が顔を近づけてくる。
灰色がかった青い瞳。
シトラスの香りが鼻を抜けていく。
「催吐薬の用意を」
低い声が彼の胸から聞こえてくる。
どくどく、どくどく。とても速く、脈打っていて、今にも心臓が破裂してしまいそうに動いている音がした。
抱き上げられ、ぎゅっと強く抱きしめられているのか、彼の髪の毛が頬にかかってくすぐったかった。
取り留めなく、心から安堵した息が漏れる。
「の、ぎ、、くん」
ハッとしたようにこちらを見下ろし、大きくて細い指が額や頬を撫でられた。
「乙葉っ、、、ごめ、俺、、なんでこんなっ」
顔にポタポタと雫が降り注がれ、必死に瞼を持ち上げる。歪む視界に映った彼は、酷く顔をくしゃくしゃにして、顔には痣が出来上がっていた。
鼻から血も噴き出しているようで、降り注がれているのが鼻血だと理解する。
「血、、、血が、、。怪我、、させない、ように来た、のに、、、ごめん、ね」
私が問題起こしてしまったのだと、この時やっと状況を把握したのだった。
呂律がしっかり回らなくて、力が入らないことを知ってか、野木くんはひたすらに謝り続けていた。
「渚、とにかく水を大量に飲ませて。それからこれ、催吐薬、経口薬だけど大丈夫かしら。これなら医者が来るみたいだから」
「レイプドラッグだ。アイツらの所持品から出てきた。その子、これからどうする?ヤッとく?」
野木くんはキッと男たちを睨むと男たちは「悪い」と反省の色を滲ませた声で言う。
「でも、薬抜けなかったらその子が辛いだろ」
「非常に言いづらいのだけど、違法ドラッグと媚薬までご丁寧にお仕事してくれてるのよね」
しかも私たちが回してるヤツね!と頭が痛そうにオネェ口調の男は言った。
「最悪な組み合わせしてくれたもんだな。頑張れよ、渚」
「ここ、客室だから清掃させるんで、なぎたんは自室に彼女連れて行ってあげなよ。部屋に誰も入れないよう伝えといてあげる。あと、彼女の着替えも大至急用意してくる」
あ、それから彼女の家にも一報入れておくわね!と頼もしいことをスラスラ言って、ゾゾゾゾと何かを引きずっていく音と共に部屋を出て行った。
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