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覗き見するように俯きがちに彼を見上げると、口角をあげている彼を目にした。
笑ってる?
「じゃあ、また明日」
よく見ようと顔を上げたが一歩遅く、彼はいつものように背を向けてスタスタと帰って行った。
「うん、やっぱり帰る時めっちゃ速い!」
あれは早歩きか?!と思ってたけど、あの脚の長さだと早歩きとかじゃなくて通常スピードなんだろうなぁ。
なんだかまた胸の奥がポカポカしてくる。
私のこと、ちゃんと好き、、、なんだよね?
「まぁ、今日も仲良く、彼氏に送ってもらったのね〜」
「お母さん?!」
うふふと娘の青春を羨ましそうに、そして微笑ましいと言わんばかりの表情だ。
黒髪ショートボブの華奢な体躯の母は天然なところもあり、娘の私でさえ心配なるほどポワポワしているところがある。
そのせいもあってか、私はしっかりしないといけない!という気持ちになる。
「髪の毛三つ編みも可愛いけれど、やっぱりお母さんは下ろしたオトハちゃんも可愛くて好きだもの。明日も野木くんに可愛いって言ってもらえると良いわね」
こんなこともあろうかと新しいヘアケアグッズとヘアアクセサリーをお母さん用意しちゃいました。と、母が楽しんで買い物してきたのだと分かるくらいに、様々なアイテムを買い揃えてくれていた。
「か、可愛すぎてつけていいのかわかんないっ!!」
眩しくて目があけられない!と目をギュッと瞑ってソワソワすれば、「とにかく家の中に入りましょうね〜」と嬉しそうに娘の背中を押して玄関の鍵を開けた。
親に見られたという恥ずかしさと彼氏なのかな?という疑問で頭の中をモヤモヤさせつつ、野木くんの言葉が甦るたびに胸の奥が熱くなった。
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