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貞二に聞いた話だと雄三は仲のいい娘はいるらしかった。
「それは勘違いでないだろうな」
「これは間違いないです」
「そうなのかね」孝蔵は頬がゆるんだ。
「これは恋の芽生えですね」貞二は言った。
「面白いことを言うの」と孝蔵はたばこをやりはじめた。孝蔵のそばから貞二は去って行った。
岡っ引きの食べ物は同心の屋敷に確保されていていつでも食べることはできた。でも孝蔵はそれに頼り切らなかったのは自分でも少し稼いでいたからでもあった。
これで孝蔵の家族はまとまってきたなと思っていたがそうではなかった。孝蔵の従妹が、貞二と付き合いはじめたという話を聞いたからだった。
「よりにもよって」と孝蔵は絶句した。「まあいいじゃないの」と妻は答えてほほえんだ。「あいつがいいのならいいか」と孝蔵は少し貞二をばかにしていたかなと反省した。
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