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◆ 「祓の力の本質は人の持つ強い思い、感情だ。だから感情的になることは悪いことじゃない。でも、それに呑み込まれたら本末転倒だ。自分自身と向き合い、コントロールできるようになれば、上手く制御できるようになる」 「それは分かったけど……その話、この時間からする必要ある?」  東の山の向こうから日が少し顔をのぞかせた頃。梓は羽鳥とともに中庭の一角にいた。  片手には竹ぼうき。半分眠ったままの頭で、機械的に手を動かす。  羽鳥はすでにきっちりとした制服姿で、少し離れたところで落ち葉を掃いていた。 「この時間しかできないだろ。夜は秋の祭の準備をしないとだし、学校の宿題や活動もあるしな」 「まあ頼んだのは私だからいいんだけどさ……」  蔵での出来事をきっかけに、改めて感じたのは自分の力への恐れだった。 でも、逃げてばかりもいられない。なにか変えることができるかもしれない。  少し向き合ってみよう。そう覚悟を決めて、羽鳥に教えを請うたのはいいが……。 「意外――いや、やっぱりスパルタ……」 「今まで逃げてきたツケが回ってきたんだろう。我慢しろ」  正論なのでぐうの音も出ない。とはいえ。 「一言多いんだけど」  聞こえなかったフリをして、羽鳥は箒を動かしつづけた。
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