18人が本棚に入れています
本棚に追加
5
◆
「祓の力の本質は人の持つ強い思い、感情だ。だから感情的になることは悪いことじゃない。でも、それに呑み込まれたら本末転倒だ。自分自身と向き合い、コントロールできるようになれば、上手く制御できるようになる」
「それは分かったけど……その話、この時間からする必要ある?」
東の山の向こうから日が少し顔をのぞかせた頃。梓は羽鳥とともに中庭の一角にいた。
片手には竹ぼうき。半分眠ったままの頭で、機械的に手を動かす。
羽鳥はすでにきっちりとした制服姿で、少し離れたところで落ち葉を掃いていた。
「この時間しかできないだろ。夜は秋の祭の準備をしないとだし、学校の宿題や活動もあるしな」
「まあ頼んだのは私だからいいんだけどさ……」
蔵での出来事をきっかけに、改めて感じたのは自分の力への恐れだった。
でも、逃げてばかりもいられない。なにか変えることができるかもしれない。
少し向き合ってみよう。そう覚悟を決めて、羽鳥に教えを請うたのはいいが……。
「意外――いや、やっぱりスパルタ……」
「今まで逃げてきたツケが回ってきたんだろう。我慢しろ」
正論なのでぐうの音も出ない。とはいえ。
「一言多いんだけど」
聞こえなかったフリをして、羽鳥は箒を動かしつづけた。
最初のコメントを投稿しよう!