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◆  夏休みの間もたまに来ていたとはいえ、新学期の通学路というものはなんとなく新鮮に思えた。  休み中の出来事を報告し合う生徒を追い越しながら、梓は自分の夏休みをなんとなく振り返ってみた。  ……色々あったなぁ。それは、もう。  話題には事欠かないが、やすやすと人に話せる内容でもない。  あの日のことは梓と聡、そして巻き込まれた真菜と絵里だけの秘密となっていた。  学校が新鮮に思えるのは、夏休みに色々あったからかもしれない。なんてことを考えながら学校へと向かっていると、集会所の前に見覚えのある姿を見つけた。それも二つ。  一方はスーツに赤いネクタイの男。いつも通りの格好をした佐山。  そして彼と話をしているもう一方は、一か月ぶりくらいに見た制服姿の聡だった。  なぜあの二人が一緒に……?  思わずじっと様子をうかがっていると、しばらくして佐山が紙袋を聡に手渡した。佐山が去っていくと、聡がくるりと梓を振り返る。 「おはよう、城崎さん。なんか久しぶりだね」 「お、おはよう。ええと、舞奉納の日以来?」 「そうだね。ちょっとあのあとバタバタしていて、片付け手伝えなくてごめんね?」 「いや、それはいいんだけど……その」  なにを話していたんだろう。気になる。でも聞いていいものか。  そんな葛藤を見透かしたかのように、聡が口を開いた。 「大したことは話してないよ。ただ、ちょっとアンケートに答えただけ」 「アンケート?」 「僕みたいな他所からきた人間が見て、今回の誘致の計画はどう見えるか、って。割と詳しく」 「……うわぁ」  それ、私の所にもいずれくるのかなぁ。聞かれても困るんだけど。 「あ」  聡は声をあげると、ふと思い出したように聡は制服のポケットを探り始めた。  忘れ物でもしたのかと思って様子を見ていると、聡は手のひらほどの大きさの白い小袋を取り出し、梓に差し出した。 「これ、よかったら」  なんだろうと開けてみると、キーホルダーが転がり出てきた。というか、このキーホルダーのモチーフって……。 「ネジ?」  そのまま機械の部品にでもなりそうな妙にリアルな見た目をしていた。すごいといえばすごいんだけど。 「なんでネジ?」 「やっぱり微妙だよね、それ。一応お土産のつもりだったんだけど」  梓の疑問符だらけの反応を見て、聡が苦笑する。 「続きは歩きながら話そうか。新学期から遅刻は笑えないしね」  それもそうだと梓もうなずき、二人そろって学校へと向かう。
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