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理想郷のパズル
「あったぞ、これもそうじゃないか?」
「!」
階段の下から聞こえてきた声に、私は作業を中断して立ち上がった。瓦礫の中からひょっこりと姿を現したのは旧知の顔である。砂まみれの彼は、その手に拳大くらいの欠片を握っていた。
とりあえず階段を上がってきてもらい、外から引いてきた水で欠片を洗う。すると、すぐに金色の綺麗な破片が姿を現した。四方に丸い突起が飛び出したそれは見間違えるはずもない――パズルのピースというものである。
「間違いない!流石だ、彰祐。お前は本当に目がいいなあ」
「へへっ」
金髪、ピアス、いかにもヤンキーといった見た目の彼は。私の言葉に照れたように鼻を掻いて見せたのだった。
「センセイにそう言って貰えるのは気分がいいや。……目がいいことくらいしか取り柄がない俺だが、今回ばかりはそれが役に立つみたいで嬉しいぜ。まだまだ先は長いけどよ、一緒に頑張ろうぜ、センセイ」
「ああ」
彼が見つけてくれたピースを、巨大な台座の上へと持っていく。その上には、既に発掘されたパズルの欠片が大量に散りばめられていた。完成図がわからないため、ひとまず“色”や“角や辺の形”などで分類されている。全部で一万ピースあると言っていたが、まだその一割程度しか発掘されていない。先は長いが、心が折れている暇はなかった。
この遺跡の中に埋まっているというパズルのピースを全て探し出し、この一万ピースのパズルを完成させなければいけない。それも、一週間の間に。非常にハードなミッションだが、任された以上こなさないわけにはいかなかった。
この任務に、自分達の――否、世界の命運がかかっているのだから。
「もう少し発掘できたら、少しずつ組立を始めよう。対へな作業だが、みんな頑張ろうな」
リーダーとして、私は声をかける。周辺で作業を続けていた仲間達は、みんな拳を上げて“おう!”と答えてくれたのだった。
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