理想郷のパズル

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 ***  かつてこの地球に存在したという、エミナール文明。その研究を長年続けてきた権威である私が、その遺跡の中で何故巨大ジグソーパズルに挑む羽目になったのか。  それは、一年前に起きたある出来事が起因している。 『初めましテ、緒方(おがた)教授。私はかつて地球に降り立ったエミナール星人の生き残りデス』  この地球には太古の昔、エミナールと名付けられた(辛うじて解読することが出来た石版に、そのような名前が刻まれていたためだ)優れた文化が存在していた。それは、現代の地球など遥かに超越した素晴らしい科学力を持つ文明であったらしい。それらを地球に持ちこんだのは、エミナールと言う惑星から来た異星の民であったという。  しかし、非常に優れた文明はある日突然謎の消滅を遂げた。かつて存在したとされる空飛ぶ車も、空間移動できるワープホールも、重力を操る装置も、万病を治す薬も全て失われてしまったという。ロストした文明の上に、辛うじて残った生命が芽吹き、時間をかけて復活を遂げて――今の人類が誕生したらしいのだ。  超古代文明の数々の技術を復活させること。  そして、その文明が滅んでしまった原因を突き止めること。  それが、私が三十年以上もの間研究を続けてきたテーマだった。まさかそんな私の元に、エミナール星人を名乗る異星人が現れるとは思ってもみなかったわけだが。 『この惑星は、そもそも我々エミナール星人が作ったと言っても過言ではないものでシタ。火星に近く、氷に覆われ冷え切った惑星だったこの星を移動させ、大気の成分を調整し、エミナール星から逃げのびてきた我々の新たな理想郷とするべく作り上げたのがこの地球であったのデス』  青い肌に銀色の髪を持つ、エミナール星人を名乗る青年は。私の目の前で宙に浮いてみせ、ワープして見せ、そして思いのまま炎や水を操ってみせた。さらに、私しか知らないはずのエミナールの文化に関する質問にすらすらと答えてみせたといっては、私もその正体を信じる他ない。  唖然とする私に、彼は衝撃の事実を語った。  この惑星をエミナール星人が作り上げ、古代人を地球に生み出して、かつては共存していたこと。――その文明は愚かな人間達の戦争と環境破壊によって滅んだということ。
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