理想郷のパズル

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 彼等はそれを嘆き悲しみながらも(そもそもエミナール星人が地球を開拓して移り住んだのは、彼等の故郷もまた戦争によって滅んだからであったという)、泣く泣く地球を捨てて立ち去ったこと。今は三つ目となる故郷を作り、生活していること――などなど。 『我々はとても残念に思っていマス。我々がいなくなった後でこれだけの復興を遂げ、新たな人類として生まれた皆さん……この素晴らしい文明が、再び失われようとしていることヲ。既にお分かりのように、この地球もまた戦争と環境破壊で滅ぶ寸前まで来ておりマス。この地球は、我々にとっても特別な存在。完全に滅んで不毛の土地となってしまうことだけは避けタイ……。ゆえに、我々の間でも、議論が進んでいるのデス』 『ぎ、議論?』 『そうデス。全ての生命が滅んでしまう前に、その元凶たる今の人類を全て滅ぼしてしまってはどうか、と。我々には、人類だけを滅ぼすウイルスを撒くことも、人類だけに害がある毒ガス兵器を使うことも容易であるからデス』 『なっ……!?』  彼の言葉が本当ならば、エミナール星人はまさに地球にとっては神にも等しい存在である。そのような者達にウイルス何て撒かれたら、人類なんぞひとたまりもないことだろう。それだけは避けなければいけない。私は必死で彼を説得した。  すると、彼は私の言葉に頷き、こう返してきたのである。 『では、貴方たちがまだ未来を作れる存在であることを、ワタシの仲間に見せて欲しいのデス。そもそも、ワタシも貴方と交渉したいと思ったからこそ、こうしてエミナールの文明の権威である貴方の前に姿を現すことにしたのですカラ……』  そうして示された条件。  それは、エミナール文明最大の遺跡である、ココット遺跡の中に埋もれている巨大パズルのピースを全て集めて、パズルを完成させること。  それも一年後の2125年の九月十日から十七日の一週間の間にだけ作業が許される。  十七日の二十四時を過ぎてもパズルが完成しなかった場合は、人類を見限って滅ぼす方法を決める、と。  何でそんな条件なんだ、という疑問こそあったが、だからといって私に選択の余地はなかった。すぐにその期間に共に発掘作業ができる仲間を集め、計画を練ることになったのである。
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