悪魔ドーナツがあざ笑う、ダイエットストーリー ―ある夫婦の愛のカタチ―

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 心美が手にした優斗の社内健康診断書。そこには、真っ赤な文字で「H」と記される。AからHの八段階で判定される検査結果は最悪のものだった。 「※要専門医受診指示 至急、医療機関にて受診……」   ダイエットと向き合う事は決して容易(たやす)い事ではない。  馬鹿げた方法かも知れない。しかし、それが優斗の選んだ愛のカタチだったのだ。そして、彼の想いはようやく心美の胸の奥深くへと届いたのだろう。それを証明する様に、診察室で座る西城の目の前には心美がいる。  夫の身を案じギュッと握りしめられた優斗の検査結果。 「分りました。医療施術無しで、彼と君が健康な体型に戻れるようにサポートします。勿論、今回は優斗には内緒で――」  心美が主体となり人生のパートナーと共に、目標に向う決意を抱く。 ダイエットの方程式の隠された答えを解いた彼女の瞳にもう迷いはない。 そう――、 彼女は、 本気で痩せたいと願う その答えを芽生えさせた。 愛する人の為に――。 「ふぅっ」 診察室に一人残る西城は感慨深く呟いた。 「ダイエットを断念した妻を痩せて見せるため、自らが彼女より大きくなる……、 僕はそこまで彼女を愛せただろうか」と。 完
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