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「お前もそろそろ人の世にずっと居なきゃならんだろうなぁ」
蛙婆は縁側に座っている青年の背中の先の池と竹林に目をやってそう言った。
「え?居るじゃないか」
その青年、柳は足をブラブラさせて振り向きながら不思議そうに答える。
「ここは半分は人の世だが、半分は違うじゃろ。だから儂は心を鬼にして言うのだよ。もうお前も儂が拾ってから十八年経った。人の世で育っていれば稼いだり嫁を娶ったりする年だ。勉学は儂等が色々教えたし、今の人の世の常識も仲間が教えたりテレビを観たりして解っておろう」
蛙婆はちゃぶ台のお茶をズズっと啜って諭す様に言った。
「じゃあ此処から出て行けと言うのかい?」
と柳は身体を部屋に向き直し縁側に正座して蛙婆を強く見つめた。
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