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そして20XX年&月%日。日本憲政史上に残る外国人参政権の認められた中での初めての東京都知事選挙の日。
この時、都知事に当選したのは、与党である自権党から出馬した元衆議院議員の女性、しかもタカ派中のタカ派として知られる人物であった。選挙の当日、出口調査では彼女に投票したのは全有権者の中で89%に上った。そして野党である日本マルクス主義党に投票したのは、全有権者の裡たったの3%、他の中道から左派の野党の得票率も「どんぐりの背比べ」状態で、与党である自権党の圧勝にて選挙の幕を閉じたのであった。
この状況に際して、日本マルクス主義党党首・出井和彦氏は、このようなコメントを発している↓。
「外国人参政権が認められた最中で、自由民権党が選挙で圧勝するのは不可解である。マジョリティによるマイノリティへの理不尽な差別・排外主義に抗ってきた我々の力量不足もあるとはいえ、この状況はおかしいのではないか?」
しかしその後、何度も行われた「外国人参政権」が認められた最中の選挙でも、与党である自権党の得票率は非常に高く、それこそこれまで外国人参政権の認められていなかった時とほとんど変わらなかった。つまり、在日外国人も含めて、自権党は日本国内で高く支持されていたというわけである。
そんなある日、ヨンチョルの住む福岡市にて「福岡市長選挙」が催されることとなった。この選挙は、ヨンチョルと彼の妻・チュンヒ、それに大学院生の一人娘のヒスンが生まれて初めて経験する国政選挙となる。彼の家族だけではない。ヨンチョルの住むこの区画の、在日コリアンの誰もが生まれて初めて経験する選挙となるのであった。
選挙の一週間前の在日コリアン商工会議所では、初めて自分たちも参与して政治家を選べるという話題で持ち切りであった。
「いよいよだな。俺たちが自分たちの手で政治家を選べる日が来るとは…」「何だか僕も、自分の一票が国政を左右することになると思うとワクワクするよ」「しかし私も、自分たち在日コリアンが遂に日本の政治に参加できるという実感が沸かないな…」「まぁ、いきなり『今日から貴方がたも選挙で政治家を選べますよ』と政府から言われても、そんなモンだろう」etc.etc.。
商工会議所にはヨンチョルも顔を出していたのだが、彼は何処となくイヤな予感がした。…というよりも、「外部から自分たちが見られているような不穏な雰囲気」であったが…。
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