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 数日後の夜。  ヨンチョルは在日コリアン商工会議所にて会合に出席したが、この日の議題を終えて打ち上げに入ると、誰もが先日の選挙の話題で持ち切りとなった。この日の打ち上げの、在日コリアンの有権者の皆さんの声はコチラ↓。 「先日の選挙だけど、俺は自権党推薦の候補者に投票したよ。何だかんだと悪口を言われているが、今までの韓日友好は他ならぬあの党が推進してきたからね」(韓流グッズ専門店店主) 「私は仏法守護学会に所属しているから、同じ信仰の誼で自権党と仏護党相乗りになっている候補者に票を入れたわ」(キムチ店経営者) 「自分は日本マルクス主義党が嫌いだから、アイツらへの当てこすりのために自権党推薦の候補者に入れたね。大体連中、天下を取ったら『俺らは昔から慰安婦問題・徴用工問題を糾弾してきた側だから』なんて宣って、絶対この問題をチャラにしてしまおうって肚なんだぜ」(焼肉専門店店長) 「僕も自権党推薦の候補者に票を入れたよ。左派政党なんかに票を入れて、それをネット右翼に知られたらどんな攻撃を受けるか、分かったモンじゃないからね」(個人輸入代行業社長) 「あたしも自権党推薦の候補者に票を入れましたよ。日本人の友人も選挙の度に自権党に票を入れているし、野党推薦の候補者よりもそっちの方が安牌だと思いますから」(韓国人学校教師)  その他、様々な声も聞かれたが、ネット右翼が「在日コリアン・特ア三国とグルになっている」と勝手に看做している左派政党(日本マルクス主義党・中道左派党・弱小政党であるが「日本の公正と平和と民主主義を守る会」etc.)に票を入れた在日コリアンの有権者は、只の一人もいなかったのである。  それからさらに数日後。  ヨンチョルが本日の店舗の営業を終え、明日焼くパンの仕込みまで済ませた後に、ふと「外国人有権者の選挙の状況」が気がかりとなった。 そこで彼が普段使いのパソコンで「在日外国人有権者 選挙」で検索をしてみたところ、検索結果のトップに「外国人有権者の皆さんへのアンケート」という文言が目にとびこんできた。 「何だろう...?」 あるいは、このアンケートにはコンピュータ・ウイルスが仕込まれているかもしれない…と、彼は一瞬思った。しかしヨンチョルは、ウイルス云々よりも好奇心の方が勝ってしまい、この正体不明のアンケートに回答することとした。  ともあれ、そのサイトを開いてみると、どうやら有名な調査会社が作成したもののようである。そして「外国人有権者の皆さんへのアンケート」という文言のみが日本語で、その他の文言は、英語・ハングル・簡体字・繁体字・ベトナム語・アラビア語・ブラジルポルトガル語・スペイン語etc.と、徹頭徹尾外国語で記されている。おそらくは、日本人が悪戯目的でアンケートに応えることを防止するためであろう。 …というわけで、ヨンチョルはこのサイトにある「ハングル」をクリックして、アンケートに臨む。   ちなみに、この民間調査会社が外国人有権者に問い合わせているアンケートの文言は、次のページのようなものであった(日本語に翻訳)。
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