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本棚に追加恋慕う
髪が舞った。
その瞬間に柔らかい花の匂いが鼻孔をくすぐった。
颯爽と歩く姿はただただ美しいと言うほかない。
それだけのことで、恋が芽生えた。
それから私は、毎日、彼女の姿を探した。
艶のある黒髪。クローバーのチャームが付いたネックレス。白のワンピースと3センチほどのヒールがあるパンプス。黒のバッグ。
服装なんて毎日変わるだろうに、同じ姿を探し続けた。
通学電車で見かけたのは、あの1回だけ。
私はいつもと同じ電車に乗っていたから、彼女が遅刻していたのかな。それともいつもより早い電車だったとか。
分からないけれど。
どうしても彼女にもう一度会いたい。
その願いが叶ったのは、彼女を初めて見かけてから、1か月が経った頃。
電車の中で、あの柔らかい花の香りがした。香水なのか、柔軟剤か、シャンプーか。すごく優しい香り。
目線だけで彼女の姿を探すと、すぐに見つかった。
艶のある黒髪。クローバーのチャームが付いたネックレス。水色のワンピースと、茶色のサンダル。黒のバッグ。
間違えるはずない。あの人だ。
顔を見たのは初めてだけど、絶対にあの時の彼女だと断言できる。
彼女の隣には、彼女に負けないくらい顔立ちの整った男性がいた。彼女と楽しそうに話をしている。
仕事の同僚? でも親密そう……。
恋人……とか。
話しかける話題もない私には、手の届かない高根の花。
それでも私は恋慕う。
遠くで眺めているだけでいい。私の心はトキメクから。
どうか、もう少し恋慕うままでいさせてください。
せめて、私がこの電車で学校に通う最後の日まで。

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