不要な感情、買い取ります

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 むしゃくしゃする。なんで俺ばっかりこんな目に合うんだ。もうどうしていいんだか、わからない。  やっと決まった仕事も三日目の今日、いきなり解雇された。俺は何もしていない、言われたことを言われたようにやっただけなのに。世の中、理不尽だ。  なんてことは思わない。だって、それもこれも俺自身の問題だからだ。  小さい頃から感情の起伏が激しく、すごく楽しそうに笑って遊んでいた次の瞬間には、いきなり怒りだしたり、泣いたりしていた。それは大人になっても変わらず、いきなり怒りだしたり、笑いだしたりしてしまい周りに迷惑をかけてしまう。  俺は社会不適合者なんてものに括られる存在なのかもしれない。今日もちょっとした指摘に対して不機嫌になり、指導役の先輩に罵声を浴びせてしまった。今思えば、怒るほどのことでもないのに。  ただ、俺だって他の人のように生活したいし、今のままじゃだめなことは分かっている。病院にもいったが、特に病的なレベルではないと言われて薬すら出なかった。本当にどうしていいのかわからないのだ。  身体の奥の方から芽生えてくる多くの感情。そしてそれらの感情は、自分でも驚くほどの勢いで成長し、表出されていく。そのたびに、俺の周りから人がいなくなっていく。こんな自分にむしゃくしゃして、どうしていいのか分からなくなってしまうのだ。  アパートへまっすぐ帰る気持ちにもなれずに、繁華街をフラフラと歩いていると、飲み屋や風俗店の看板に紛れ、弱々しく光る一つの看板が目についた。  よくある買い取り専門店の看板だが、その買い取り品目が俺の注意を引いた。 ”不要な感情買い取ります”
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