不要な感情、買い取ります

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設問2 あなたが人生で一番悲しかったエピソードを思い出しながら、枠内に三角形を描いてください。  今度は悲しい思い出か。これはすぐに出てくる。お母さんが病気で死んだことだ。まだ、俺は幼稚園児だった。そう言えば、俺が感情のコントロールが効かなくなったのもその頃からに思う。  タブレットの枠内に三角形を描いていく。  そんなことを設問10まで繰り返したところで、丸メガネの店員がタブレットを手元に引き、何やら操作を始めた。 「おお、これはすごいですね」  すごい?  「いやぁ、どの感情もなかなかの質ですが、特に怒り関係の感情は閾値も低くてかなり高いレベルの質ですね」 「あ、そうなんですか」 「どうでしょう。このレベルの怒りの感情であれば、三十万円で買い取らせて頂きますが」 「三十万っ」  今まで俺を苦しめてきた、この怒りの感情を三十万で買い取るっていうのか。 「はい。ただし、ご売却後の買い戻しはできないシステムになっています」 「えっと、それはつまり、俺からは怒りという感情が完全になくなるということですか?」 「はい、その通りです。怒りの感情がなくなれば、争い事や揉め事に振り回されることなく、安寧に人生を過ごせる可能性が高そうですね」 「う、売ります。俺の怒りの感情、売ります」
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