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これは千載一遇のチャンスだ。邪魔でしょうがなかった感情を、こんなに高額で買い取ってもらえるなんて、この偶然の出会いに感謝だな。
「本当ですか、それはありがとうございます。では、こちらの同意書にサインをいただけますか」
そう言って、再びタブレットとペンを渡してきた。画面には、いくつかの同意を求める項目が表示されている。
・いかなる理由があろうとも、売却された感情の買い戻しはできない。
・買い取り金額が手渡された時点で、売却された感情の所有権は当社に移譲される。
・売却された感情の個人情報については厳重に保護され、売却した個人が特定できないように配慮される。
・感情の売却は、売却者側の自由意志であり、当社がこれを強要した事実はないことを証明する。
・感情を売却した後の売却者の利益不利益には、当社は一切関わりがないものとする。
上記5つの項目にすべて同意する場合のみ、下枠に署名ください。
さらさらと説明書きを読み、枠内に署名を行った。
「はい、これで契約成立です。では、こちら代金の三十万円になります。恐れ入りますが、もう一度画面の領収書の欄に署名いただけますか」
目の前の置かれた三十万円に色めき立ち、かなり汚い字ではあるが領収書にも署名を終えた。
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