不要な感情、買い取ります

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 怒りの感情を売却してからというもの、俺はは積極的に売却するようになった。先週は嫉妬、その前は後悔を売却した。そして、今から不安の感情を売却しようと、いつもの階段を上っている。 「いらっしゃいませ。どうですか、嫉妬や後悔を売却されてからは?」  相変わらずの丸メガネの店員が親しく話しかけてくる。 「ああ、他人と比べたりもなくなって、毎日穏やかに暮らせているよ。心が平坦でいるっていうのはストレスなくていいね」 「それを求めて、一度に多くの感情を売却される方もいるんですよ」 「へえ、そうなんだ。でも、俺はさすがに楽しいとか嬉しいは無くしたくないな」 「お客様それぞれですから。それで、今日はなにを売却されるのですか?」 「今日は不安を売りに来たんだ」  そして、俺はいつものようにタブレットに署名をし、無事に不安の感情を売却した。 ◆◇◆◇ 「うっ」 「わははは、こいつマジでワサビそのまま食いやがった。バカだね~」  悪意ある言葉と視線が俺に降り注ぐ。怒りの感情を売却して、温厚になったことから上司や同僚に飲み会に誘われることが多くなった。  最初は毒づかない俺は誘いやすい対象だったのだろうが、次第に俺は、まわりのストレスの発散口となっていた。そして、今も無理やりにワサビを食べさせられている。
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